チャンピオンシップ 冬の移籍を振り返る① 24位~17位編 - EFLから見るフットボール

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チャンピオンシップ 冬の移籍を振り返る① 24位~17位編



おせちでも、箱根駅伝でもなく、海外サッカーファンにとっての1月のお楽しみといえば、トランスファーウインドウ。

あなたのチームにとっての1月は、いったいどんな1ヶ月間だっただろうか?
チャンピオンシップ24チームの冬の移籍を見ていこう。



(移籍情報は基本的にtransfermarktに準拠、ユース選手の移籍等は除く。2月8日時点の逆順位順)


16位~9位編はこちら

8位~1位編はこちら


24位 イプスウィッチ】

IN
DFジェイムズ・コリンズ(←フリー)
DFジェイムズ・ブリー(←アストンヴィラ ローン)
DFカラム・エルダー(←レスター ローン)
DFジョシュ・エマヌエル(←シュルーズベリー ローンバック)
MFサイモン・ドーキンス(←フリー)
MFアラン・ジャッジ(←ブレントフォード 移籍金非公開)
FWウィル・キーン(←ハル ローン)
FWコリン・カナー(←ハダースフィールド ローン)
OUT
DFジャノイ・ドナシャン(→アクリントン・スタンリー ローン)
MFタヨ・エドゥン(→フルアム ローンバック)
MFジョーダン・グレアム(→ウォルヴズ→オックスフォード ローンバック)
MFジョーダン・ロバーツ(→リンカーン ローン)
MFダニー・ロウ(→リンカーン ローン)
FWジョン・ウォルターズ(→バーンリー ローンバック)
FWシェイン・マクラフリン(→AFCウィンブルドン フリー)




もしポール・ランバートが、沈みゆく一方に思えるイプスウィッチの運命をここから変えることができたのなら、今後我々は彼を「21世紀のウィンストン・チャーチル」と呼ぶ必要があるだろう。今シーズンのほとんどを “Basement Boys” として過ごす彼らにとって、冬の移籍市場は残り数少ない、チームを上昇気流に乗せるためのチャンスだった。


額面通り受け取れば、ローンバックのエマヌエルを含めれば8人を獲得した積極的な補強は、ポジティブに捉えるべきものだ。

実際に今年初勝利となった1月12日のロザラム戦では、加入したばかりのコリンズが終盤猛攻を仕掛けたロザラムからのボールをことごとく跳ね返し、直近の公式戦15試合で1勝だったチームの勝利に大きく貢献した。3年前、プレミアリーグへの移籍を間近に控えていた「魔法使い」アラン・ジャッジを悲劇が襲った舞台は、何を隠そうここポートマン・ロードだった。復帰後、あの頃の輝きを失った彼が再起を懸ける新天地がイプスウィッチだというのは、何とも胸を打つストーリーではないか。

だが、それでも、全体的に獲得した選手たちの顔ぶれを見ると、「手当たり次第声をかけた中で来てくれた人」という印象は拭えない。先週のウェンズデイ戦では、負傷のコリンズは別にしても、新戦力の内エルダーとドーキンスの2人が既にベンチからも外れている有様で、果たしてこれを監督の意向が最大限反映された効果的な補強と呼んでいいのかは疑問が残る。

また、ランバート監督は常々避けたい事態だと語っていたものの、デッドラインデイにブリーを獲得したことによって、チーム内のローン選手が6人になってしまった。EFLの規定で、18人のマッチデイスカッドに入れられるローニーの数は5人までと決まっているため、ウェンズデイ戦ではエルダーがこの犠牲になった形だ。

エルダーはレフトバックを主戦場とする選手だが、さらにランバート監督の頭を悩ませているのは、本来そのレフトバックでレギュラー格のヨナス・ヌドセンが完全な不良債権と化してしまったことだ。

移籍希望を公言しボクシングデイ以降メンバー表から姿を消したヌドセンだが、遂に冬の移籍市場の間には彼に関心すら寄せるクラブはなく、1ヶ月以上不出場のままイプスウィッチの選手としてシーズン終了を迎えることが決まった。

エルダーはその穴埋めを期待されてレスターからやってきたが、出場した試合での低調なパフォーマンスもあり、ローン選手6人の中では現在序列が最下位という状況。従ってウェンズデイ戦では若手のマイルズ・ケンロックがレフトバックに入り、平均年齢23.3歳という若すぎる4バックの形成に一役買っている。

これがイプスウィッチの陥っている負の連鎖だ。自身の経歴に降格の2文字を付けたがる物好きなどいないし、選手の立場からすれば今のイプスウィッチに行くメリットは、まず間違いなく一度はチャンスを貰えるということ以外にない。

こういった状況がわかりきっていた中で仕事を引き受けたポール・ランバートは尊敬されるべきだが、どうやら彼のCVには、2年連続でRの文字が入ることになりそうだ。



23位 ボルトン】

IN
GKレミ・マシューズ(←ノリッジ 移籍金非公開、完全移籍移行)
MFカラム・コノリー(←エヴァートン ローン)
OUT
MFスティーヴン・アイルランド(→リリース)
FWクリスティアン・ドーイッジ(→フォレストグリーン ローンバック)




以前の記事でも紹介した通り、移籍市場開幕直後から恥ずべき事態に陥ったボルトン。結局ドーイッジはフォレストグリーンに復帰したが、買い取り義務があったもう1人、レミ・マシューズについては、無事完全移籍に移行する運びとなった。

とはいえ、それ以外で獲得できたのは、ウィガンでも決して主力級の活躍をしていたわけではないコノリーのみ。
10月以降、リーグ戦20試合で1勝という何とも救いようのない成績が続く中で、1月にメンバーのアップデートがほぼ行えなかったのは、事実上の時間切れを意味する。

現在ケン・アンダーソン会長は2つのコンソーシアムとクラブ売却に向けた交渉を行っており、その話がまとまれば、マーク・ウォーバートンが新監督として招かれるという噂が出ている。もしそれが事実だとすれば、若手の育成に定評を持つウォーバートン招聘の意図は、全く想像に難しくない。




22位 レディング】

IN
GKエミリアーノ・マルティネス(←アーセナル ローン)
DFマット・ミアズガ(←チェルシー ローン)
MFオヴィー・エジャリア(←リヴァプール ローン)
MFルイス・ベイカー(←チェルシー ローン)
FWネルソン・オリヴェイラ(←ノリッジ ローン)
OUT
DFチアゴ・イロリ(→スポルティング 移籍金非公開)
DFダレン・シドエル(→KSVルーセラーレ ローン)
DFアクセル・アンドレソン(→ヴァイキング 移籍金非公開)
MFデイヴィッド・メイラー(→コヴェントリー ローン)
MFレアンドロ・バクーナ(→カーディフ 300万ポンド)
MFデイヴ・エドワーズ(→シュルーズベリー フリー)
MFペッレ・クレメント(→PECズヴォレ フリー)
MFジョシュ・シムズ(→サウサンプトン ローンバック)
MFアドリアン・ポパ(→ルドゴレツ ローン)
FWマーク・マクナルティ(→ハイバーニアン ローン)




1222日にやってきたジョゼ・ゴメス新監督は、チームの攻撃的なスタイルへの移行を目的に、就任後すぐに最初の手を打った。手始めにマーク・マクナルティ、デイヴィッド・メイラー、ヴィト・マンノーネの3名をトップチームから追放すると、その他の選手たちにも続々と放出を容認する旨を伝えていったのだ。

結果として、ミネソタ・ユナイテッドへの移籍が発表間近のマンノーネまで数に入れれば、若手も含めこの冬の総放出人数は17人。大鉈を振るったゴメス監督からすれば、移籍成立までやや時間のかかった戦力外の3人や、おそらく想定外だったデッドラインデイのバクーナ移籍というイレギュラーこそあったものの、就任からほぼ1ヶ月で自分好みのチームを整えることができたこの移籍市場には、満点に近い点数を付けることができるはずだ。

FFPの問題があり、移籍金は支払わずに5人全員がローン加入となった新戦力たちを見ても、一見すると降格圏に沈むチームの補強とは思えないほどの顔ぶれが出揃っている。

アーセナルから獲得したマルティネス、そしてポール・クレメント前監督やロン・グーレイ前CEOが退団したのにもかかわらずチェルシーからミアズガ、ベイカーの実力者2名を獲得している点を考えると、やはり各クラブの補強戦略における地理的な条件が果たす役割は大きいのだろう。
特にアメリカからチェルシーに来てまずロンドンに自宅を構えているであろうミアズガ、シーズン前半は遠方のリーズにローンされていたベイカーにとっては、レディングというエリアの持つ魅力は大きかったものと推測され、まさに地の利を生かしてレディングは彼らの獲得に成功した形だ。

またゴメス監督が当初から補強を要望していたストライカーには、ノリッジで完全にポジションを失っていたネルソン・オリヴェイラを獲得。近年レディングとの関係を急速に深め、ゴメス監督をクラブの中国人オーナーに紹介した張本人と言われる「スーパーエージェント」キア・ジョオラビシアンのポルトガル・コネクションを活かした獲得と見られ、オリヴェイラの代理人であるジョルジュ・メンデス共々、レディングの補強には数々の思惑が渦巻く。

もっとも、彼ら全員が確かな実力を持った選手たちであることは疑いようもなく、実際にここ数週間のレディングは戦いぶりに大きな進展を見せている。少なくとも、取った9人の内4人が早くも放出され、残った中でもレギュラーを掴んでいるのはアンディ・イアダムただ1人という前体制下での昨夏の補強を思えば、残留に向けて大いに希望の持てる移籍市場だったと言えよう。




21位 ロザラム】

IN
DFマイクル・イへクエ(←アクリントン・スタンリー ローンバック)
MFマット・クルックス(←ノーサンプトン 移籍金非公開)
FWジェリー・イェーツ(←カーライル ローンバック)
OUT
MFライアン・マニング(→QPR ローンバック)




良くも悪くも静かな1月となってしまったロザラムにとって、ここからの3ヶ月は極めて難しい戦いになることが予想される。2月8日の段階で21位、そのすぐ下の降格圏とはたった1ポイントしか離れていない。

この移籍市場において、ポール・ワーンは2つの願い事を毎晩星に向かって祈り続けていたはずだ。

1つは主力選手の残留。これは現実のものになった。PKテイカーまで任されていたライアン・マニングこそリコールされてしまったが、1月に補強できずかつ中盤の主軸ルオンゴをアジアカップで欠いたQPRが彼を呼び戻すことなど小学生ですら予想できたことで、それ以外はノリッジやダービー、ストークから狙われたMFウィル・ヴォークス、ハルから狙われたFWマイクル・スミスといった選手たちを全員守ることができた。

もう1つは言うまでもなく、新戦力の補強だったが、これはほぼ失敗と言っていいだろう。いくらなんでも、2部残留を目指すチームの冬の補強が、4部の残留を争うチームから取った1人だけとあっては、ただでさえ失速気味のチーム状況にあって強気になることはできない。

デッドラインの直前までローンを中心に新戦力の獲得を模索していたというワーン監督だが、そのエフォートが実を結ぶことはなかった。彼によれば、「プレミアリーグのウインガー、ストライカー」との話し合いがかなり進んでいたそうで、その無念さは察するに余りあるところだ。

2日のミルウォール戦では、早速ローンバックしてきたイへクエ、イェーツの2人を先発起用するなど、ワーン監督の自転車操業は続く。先日エマージェンシーローン市場の廃止を「金持ちが考えたルール」だと訴えた彼の言葉には、これ以上ない説得力があった。





20位 ミルウォール】

IN
GKトム・キング(←AFCウィンブルドン ローンバック)
DFアレックス・ピアース(←ダービー ローン)
MFフレッド・オニェディンマ(←ウィコム ローンバック)
MFベン・トンプソン(←ポーツマス ローンバック)
MFベン・マーシャル(←ノリッジ ローン)
MFライアン・レネット(←シェフィールド・ユナイテッド 100万ポンド、完全移籍移行)
FWトム・ブラッドショウ(←バーンズリー 100万ポンド、完全移籍移行)
OUT
DFバイロン・ウェブスター(→スカンソープ フリー)
DFジェイムズ・ブラウン(→リンカーン ローン)
MFジョージ・サヴィル(→ミドルズブラ 700万ポンド、完全移籍移行)
MFジェム・カラジャン(→セントラルコースト フリー)




夏、昨シーズン後半のプレイオフプッシュの立役者となったベン・マーシャルの再獲得を、ミルウォールに関わる全ての人々が望んでいた。数字がその理由を語る。16試合の出場で3ゴール5アシスト、彼がいた間、彼よりも多くのゴールに貢献したミルウォールの選手は他に誰もいなかったのだ。

しかしマーシャルは、そんな人々の願いをきっと肌で感じつつも、ノリッジに加わることを選んだ。

彼の決断は、決して間違ったものではなかった。移籍交渉の壇上で、彼は終わったばかりのシーズンで特に見せ場もなく中位に沈んだチームから今の快進撃の予感を感じたのだろうし、このまま行けば、彼は3ヶ月後に再び「プレミアリーグの選手」となる。
それでも、それまでたった6試合の出場、8月以来リーグ戦ではピッチにも立てないというチーム内での立場に関しては、さすがに許容できるものではなかったはずだ。しかも彼が使われたポジションは、攻撃に勤しむウイングではなく、不慣れなライトバックだった。

そんな中でも、マーシャルには帰る場所が残されていた。
1月12日、ノリッジがウェストブロムとの上位対決を戦っていたその日、マーシャルはザ・デンのスタンドにいた。

噂は過熱し、ミルウォールのファンは期待を膨らませた。それは、ぬか喜びにはならなかった。
実力はもちろんのこと、どこよりも強力な力を持つミルウォールファンの心情を考えても、彼は間違いなくこの冬最も望まれた選手だった。

マーシャルの獲得だけで大成功と言っていいミルウォールの1月だが、その他にも加入面では、経験豊富なDFピアースの獲得、そしてLeague Oneで快進撃を続けたポーツマスの原動力だったもう1人の「ベン」、トンプソンの復帰など、明るい話題が多かった。
唯一心配なのはストライカーの補強がうまくいかなかったことで、結局直前で本人が移籍を拒否したルディ・ゲステードのローンにこだわりすぎてしまった感は否めない。




19位 ウィガン】

IN
DFダニー・フォックス(←ノッティンガム・フォレスト 30万ポンド)
DFヨナス・オルソン(←フリー)
MFリー・エヴァンズ(←シェフィールド・ユナイテッド 移籍金非公開、完全移籍移行)
MFベニ・バニンギミ(←エヴァートン ローン)
MFジェイミー・ウォーカー(←ピーターバラ ローンバック)
MFアンソニー・ピルキントン(←カーディフ フリー)
FWリオン・クラーク(←シェフィールド・ユナイテッド ローン)
FWデヴァンテ・コール(←バートン ローンバック)
OUT
DFダン・バーン(→ブライトン ローンバック)
DFアレックス・ブルース(→キルマーノック ローン)
MFマックス・パワー(→サンダランド 移籍金非公開、完全移籍移行)
MFジョーダン・フローレス(→ダンダーク 移籍金非公開)
MFカラム・コノリー(→エヴァートン→ボルトン ローンバック)
MFレアンドロ・ダ・シルヴァ・ロペス(→ジリンガム ローン)
FWジェイムズ・ヴォーン(→ポーツマス ローン)
FWウィル・グリッグ(→サンダランド 400万ポンド)




悲しみのデッドラインデイ、クラブによる懸命の抵抗もむなしく、期限を過ぎた午前3時前に発表された人気者ウィル・グリッグの完全移籍。彼のゴール、彼のキャラクター、そして彼の「あの」歌を失ったウィガンファンの悲しみは計り知れないが、残留争いの最中、いつまでも下を向いているわけにはいかない。

次の歌詞はもうできている。“Clarke’s on fireだ!

シェフィールド・ユナイテッドの大型補強に押し出される形で、リオン・クラークがやってきた。やはり思い出されるのは昨シーズン前半戦の目覚ましい活躍であり、4年前の毒にも薬にもならなかった1度目のローン期間ではない。早速デビューとなった先週のQPR戦で、クラークは1ゴール1アシストの活躍を見せた。


またポール・クック監督にとってさらに心強いのは、チェルシーからローン中のリース・ジェイムズが残留したことだ。
このジェイムズは、今シーズンリーグ全体のフルバックと比較しても、攻撃貢献度において圧倒的な数字を記録している。




1月にチェルシーに戻る、あるいはより上位のクラブへの再ローンの可能性もあったジェイムズだが、クック監督によれば中にはプレミアリーグからの関心さえあった中で、ジェイムズ自身がウィガン残留を希望したのだという。さすがに来シーズンもとなると難しいかもしれないが、まずは1シーズンごとの残留が至上命題となる今のウィガンにとって、彼の存在は頼もしい限りと言えるだろう。




18位 プレストン】

IN
GKコナー・リプリー(←ミドルズブラ 移籍金非公開)
DFケヴィン・オコナー(←クルー ローンバック)
DFトミー・スパー(←フリートウッド ローンバック)
DFジョー・ラファ―ティ(←ロッチデイル 移籍金非公開)
MFブラッド・ポッツ(←バーンズリー 移籍金非公開)
MFジョシュ・ギネリー(←ウォルソール 移籍金非公開)
FWジェイダン・ストックリー(←エクセター 75万ポンド)
OUT
GKクリス・マクスウェル(→チャールトン ローン)
DFカラム・ウッズ(→ブラッドフォード フリー)




ローンバックを除いても5人の選手を新たに獲得したプレストン。決して静かではない移籍市場だったが、一方でその獲得は1月23日までに全て済まされており、とにかく迅速な動きが12月頃から目立っていた。

一皮むけた印象のあったカラム・ロビンソン(11月までの出場で10ゴール)の長期離脱、ショーン・マグワイアの度重なる負傷など、特に前線の選手を中心に多くの怪我人が出ている今シーズンのプレストンにとっては、早くから戦術にフィットさせるという意味でも、できる限り早く新戦力を獲得し起用することがこの冬の最大のテーマだった。

もちろん、それを優先するあまりに安物買いの銭失いになってしまっては元も子もないが、そこは近年補強のコストパフォーマンスの良さで知られるプレストンのスカウティングチーム。心配する方が野暮というものだ。

何より先に言及しなければならないのは、移籍市場が開いてすぐ、2018年にイングランドのプロリーグで最も点を取った男、ジェイダン・ストックリーの獲得に成功したことだ。しかもリリースクローズを行使しての獲得のため、移籍金はたったの75万ポンド。閉店直前のスーパーに行ってもこれほどのお買い得品はなかなか見つからない。

昨年冬にギリギリでジョーダン・フーギルを失って以来、ターゲットマンの不在に頭を悩ませていたアレックス・ニールにとって、ストックリーは願ってもない人材だった。さらに同日にバーンズリーから獲得したブラッド・ポッツも、1月の終盤には2試合連続でゴールを決める活躍を見せ、年末から失速気味だったチームを活性化させた。

資金力では他クラブに比べて見劣るものの、それを補って余りあるほどのスカウト力で強固なチーム力を維持しているプレストン。この冬もボロから獲得したリプリー(彼も今シーズンの前半はアクリントンにローンされていた選手だが)を除けば、新戦力全員が下部からの獲得という点に、彼らのキャラクターがよく表れている。シーズン後半、台風の目になってくるかもしれない。




17位 ブレントフォード】

IN
DFチードジー・オグベネ(←エクセター ローンバック)
DFトム・フィールド(←チェルトナム ローンバック)
OUT
DFクリス・メパム(→ボーンマス 1200万ポンド)
DFジョシュ・クラーク(→バートン ローン)
MFライアン・ウッズ(→ストーク 650万ポンド、完全移籍移行)
MFニコ・エナリス(→北京国安 490万ポンド)
MFアラン・ジャッジ(→イプスウィッチ 移籍金非公開)




実質的な新戦力はゼロ。しかし上層部が忍耐を重ねた結果、ようやくトーマス・フランク監督のスタイルがチームに浸透し、3バックになった新生ビーズは2019年未だに無敗をキープしている。

元々いるメンバーの力を考えれば、そもそもプレイオフ争いくらいしていないとおかしいチームだと言われればそれまでなのだが、移籍市場という観点で言えばニール・マペイ、オリー・ワトキンス、エズリ・コンサといったとても魅力的な選手たちを守り抜き、今後もチームの中心に据え置くことができた。

守れなかった選手もいた。1200万ポンドの移籍金を残し、ボーンマスへと旅立ったクリス・メパムである。
ただ、もちろん戦力面だけを考えれば痛いメパムの移籍も、クラブの打ち出す「Bチーム」施策の広告塔としての役割を考えれば、損ばかりではない。

ブレントフォードは2016年5月、それまでのアカデミーシステムを解散し、代わりに実質のU23チームである“Brentford B”を設立した。
このBチームは、欧州各地でスカウトしてきた若手選手や、他クラブのアカデミーでリジェクトされた10代後半の選手たちで構成されており、2012年にチェルシーをリジェクトされた過去を持つメパムは旧アカデミーからブレントフォードに在籍していたものの、新システム発足時の中心選手として謂わばBチームの象徴的な存在だった。

そのメパムが、Bチーム出身者の中で初めてトップチームのメンバーに入り、スタメンの座を掴み、1000万ポンドを超える移籍金でプレミアリーグ移籍を果たすことになった。これはチームにとって、3年前に下した前例を見ない決断の正当性を証明するという点において、非常に大きな意味を持つ移籍だ。

現在ではハダースフィールドなどもこれに追随しBチームを運営しているが、一方でブレントフォードに対してはアカデミー閉鎖を批判する声もある。ブレントフォードは決して「不作のアカデミー」ではなかったからだ。

そもそも、彼らがアカデミーを解散した理由には、幼少期から多額の費用を費やして子どもたちを育ててもプロになれるのはごく一握りであり、運よく才能ある選手を育てられたところで、今はビッグクラブがユース年代の内に買っていってしまうため、手元には最小限の補償金しか残らないという事情がある。その決定打となったのが、イアン・カルロ・ポヴェーダ(現マンチェスター・シティ)、ジョシュア・バウイ(現マンチェスター・ユナイテッド)が立て続けに安価で移籍したことだと言われている。

ただ、そのような例があるからと言って、他の選手全員が前述の2人と同じ道を選ぶわけではない。実際に、今のイングランドU16代表には元ブレントフォードの選手が4人いる。しかし彼らがブレントフォードを離れたのは、他からの誘いがあったからではなく、ブレントフォードがアカデミーを解散したためだった。もちろん10歳、11歳といった子どもたちが通うアカデミーの存在は、地域コミュニティにとっても大きな意味を持つ。優秀な指導者を有していたブレントフォードのようなクラブであれば尚更で、資金難に苦しむLeague Twoのクラブがアカデミーを閉鎖するのとは訳が違う。

ブレントフォードのBチーム創設が正しい判断だったかどうか、その答えは、これからの時間が教えてくれるだろう。



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