【16位 シェフィールド・ウェンズデイ】
IN
DFドミニク・アイオーファ(←ウォルヴズ 移籍金非公開)
DFアシュラフ・ラザール(←ニューカッスル ローン)
MFロランド・アーロンズ(←ニューカッスル ローン)
OUT
なし
まるで夏の焼き直しを見ているかのような冬の移籍市場だったが、唯一違うのはファンからの期待度である。スティーヴ・ブルース新監督の仕事始めとなったデッドラインデイに、ウェンズデイは3人の選手を立て続けに獲得した。
果たしてこれは、喜ぶべき結果だろうか?確かに前任のヨス・ルフカイの下でのウェンズデイは明らかに底を見せていたし、リー・バレン、スティーヴ・アグニューといった暫定監督の下でチームは持ち直し、いよいよ言わずと知れた経験と実績を持つブルースの指揮が始まる。そういった意味では、ファンが一度は完全に行き詰ったチームの今後に思いを馳せ、大きな期待を寄せるのも当然だ。
だが、冷静になって今のメンバーを見返すと、やはりこの程度のアクティビティでは物足りなさが残ることは否めない。
3人という補強の数はまだいい。問題なのは、誰も放出していないことだ。
4年前、デフォン・チャンシリオーナーの就任に伴いやってきた監督のカルロス・カルヴァハルは、チームをウェンブリーでのプレイオフ決勝に導くなど、その愛すべきキャラクターと同等に特筆すべき結果を残した。それが「功」だとすれば、我々は「罪」の部分にも目を向ける必要がある。彼が行ったチーム編成は極めてアンバランスで、それが昨シーズンは彼自身の首を絞め、今に至るまでウェンズデイに影を落とし続けている。
例えばストライカーだ。ギャリー・フーパーやスティーヴン・フレッチャー、フェルナンド・フォレスティエリといったお馴染みの選手たちだけでも十分強力なのに、有名な “Carlos had a dream…” のチャントにも登場するルーカス・ジョアンや、ルフカイ監督の就任後に大きなステップアップを見せたアッデ・ヌヒウがいる。さらに昨シーズン初めにはサム・ウィノールまで獲得した。
この中では、フレッチャーやフォレスティエリの稼働率の低さを考慮すべきであろうし、ヌヒウのように明らかに異なる特徴を持った選手もいる。が、それにしても高い実力を持ったストライカーが6人いるという状況は異常以外の何物でもなく、そこにこの冬も手を付けなかったのは不可解だった。
他にも中盤センターなどがダブついている一方で、カルロスがほとんど手を付けず、ルフカイが学徒動員と名付けるのが相応しいほどに若手をどんどん起用していった守備陣、特にセンターバックに関しては、何の動きも見られなかった。
アイオーファの獲得で手薄だったライトバックのオプションを確保したのは良いことだが、ラザールを獲得したレフトバックのポジションは既にベテランのダニエル・プディル、モーガン・フォックスに成長著しい若手のジョーダン・ソーナリー、マット・ペニーが争いを挑んでいる場所で、人員は十分すぎるほどに確保できていた。ラザールは前目のポジションでもプレイできるが、左アウトサイドといえばスター選手のアダム・リーチが主戦場とする場所で、それ以前に同じ新加入のアーロンズともバッティングしてしまう。補強ポイントはそこではなかったはずだ。
こういった歯痒い動きの責任を取るべき人物はただ1人。オーナーのデフォン・チャンシリに他ならない。
彼はクラブ買収時、3年以内にプレミアリーグ昇格という目標を打ち出し、そのために惜しみない投資を続けてきた。また彼は、自身がフットボールのエキスパートではないことを自覚した上で、その資金の使い道を時の監督に一任してきた。もちろん今回とて例外ではない。つまり、1月2日に就任するも、その後約1ヶ月に渡って休暇を取った後に指揮を開始することが決まっていたブルースに、彼は全権を委譲していたのだ。
断っておくが、これはブルースが1月に休暇を取ったこと自体を糾弾しているのではない。彼がアストンヴィラで受けた仕打ちは酷いものだったし、彼は昨年1年間の間に最愛の両親を共に亡くしている。これまでスティーヴ・ブルースという男が成し遂げてきた業績、そして1人の人間としての精神状態を考えれば、個人的には来シーズンからの指揮を約束してあげてもよかったくらいではないかと思う。
その上で、チャンシリが2月初めからの指揮ということに合意しながら、ブルースがカリブ海での休暇から帰ってくるまで何のトランスファーアクティビティも行わなかったのは、ただの責任逃れに思えてならない。よく「金は出すけど口は出さない」オーナーが理想と言われるが、口を出さなすぎるのも問題である。
フットボールダイレクターすら置かず、長期的な方針がないままに補強をその時の監督任せにしていれば、強いチームなど作れるわけもない。チャンシリにとって不運だったのは、その出発地点となったカルロスに、ダイレクター的な才が乏しかったことだ。ルフカイはなんとか手を付けようとしたが、カルロス時代の無駄な出費のせいでFFPにリーチがかかっており、動きたくても動けなかった。ブルースはそういった面でも信頼に足る人物だが、それ以前に新監督として、現存のメンバーを少しでも見る時間が欲しいと思うのは当然のことだろう。
だが、同時期に監督交代を行い、素早くチームを刷新したレディングに比べると、勝負の春に向かうシェフィールド・ウェンズデイには数多くの火種が燻っているままだ。いくらあのブルースといえどもこれでは心配も尽きず、彼らは今でさえ降格争いに片足を突っ込んでいることをもう一度思い出し、危機感を募らせるべきなのではないか。
【15位 ストーク】
IN
DFダニー・バート(←ウォルヴズ 300万ポンド)
MFライアン・ウッズ(←ブレントフォード 650万ポンド、完全移籍移行)
FWベニク・アフォビ(←ウォルヴズ 1200万ポンド、完全移籍移行)
FWサム・ヴォークス(←バーンリー 700万ポンド)
OUT
DFライアン・スウィーニー(→マンズフィールド フリー、完全移籍移行)
DFエリック・ピーテルス(→アミアン ローン)
DFクコ・マルティナ(→エヴァートン→フェイエノールト ローンバック)
MFイブラヒム・アフェライ(リリース)
FWピーター・クラウチ(→バーンリー フリー)
FWタイリース・キャンベル(→シュルーズベリー ローン)
🚨 VOKES INCOMING! 🚨— Stoke City FC (@stokecity) 2019年1月31日
💬 'You can see a great squad here and it's one I'm definitely looking forward to getting started in.'
Sam's a Potter, joining on a three-and-a-half year deal from @Burnley#SCFC 🔴⚪️ pic.twitter.com/QEsusAgq26
シーズン前の「優勝候補筆頭」という評価こそ今や悪い冗談にしか聞こえなくなってしまったものの、ストークがこの冬に行った最大の補強は、何といっても新監督のネイサン・ジョーンズだろう。
それまでの実績も去ることながら、やはり出色は前職のルートンでの仕事ぶりだ。昨シーズンは昇格候補筆頭と目された中でリーグ戦94ゴールを記録しLeague One昇格、そして今シーズンもリーグの壁を感じさせない戦いぶりで、退任時には彼らを2位に導いていた。ジョーンズの退任後、現在ルートンはLeague Oneの首位に立っているが、暫定監督を務めるクラブレジェンドのミック・ハーフォードは事あるごとに、自分はジョーンズのやり方をそのまま踏襲しているだけだと主張している。
だからこそ、ジョーンズがルートンでの約束された成功を捨て、難しい状況にあるストークへの(一応は)ステップアップを選んだことは、少なくない驚きを持って受け入れられた。今シーズン中の昇格は現実的に見て厳しいとしても、彼がこの半年間でストークというチームを手の内に入れることができれば、その後に待つ成功も約束されたようなものだ。
そういった意味で、ヴォークスの獲得が非常に重要な意味を持つ。彼は29歳、まさに今選手としての全盛期を迎えており、毎試合スタメンで出場し前線のターゲットとなることができる。即ちチームの軸として据えられる選手であり、ジョーンズが新しいチーム作りを進めていく上で1つ計算できる存在だ。
このヴォークスとのトレードのような形でピーター・クラウチを失ったことは、確かに理屈ではない損失と言えよう。しかし単純に戦力面だけを見た場合、これはwin-winのトレードだ。
ストークにとってヴォークスがプラスになる理由は先に述べた通りで、38歳にもなるクラウチに「プランB」以上の働きを求めるのは難しいという事情もある。一方でバーンリーには、既にクリス・ウッドやアシュリー・バーンズといったターゲットマンがいることから、ストークにおけるヴォークスのような需要はない。スーパーサブとしての期待値で見た場合、まだまだ身長が縮み始めるような年齢でもなく、あらゆる引き出しを持つクラウチは打ってつけの存在だ。
守備面での補強がバート1人で、特に人材難にもかかわらずピーテルスを放出したレフトバックに大きな不安が残るものの、ここはルートン時代同様にウイングバックを採用し中盤の選手を回すのかもしれない。いずれにせよ、ジョーンズの柔軟な考え方、そして選手の「ケツを叩く」能力は驚きの勝利を収めたリーズ戦でも証明済みで、残りのシーズンの戦いぶりには注目が集まる。
【14位 QPR】
IN
MFライアン・マニング(←ロザラム ローンバック)
OUT
DFアレックス・バプチスト(→ルートン ローン)
MFショーン・ゴス(→セント・ジョンストン ローン)
MFチャーリー・オーウェンズ(→ウィコム ローン)
MFイリアス・シェアー(→スティーヴネッジ ローン)
MFデイヴィッド・ウィーラー(→MKドンズ ローン)
FWポール・スミス(→アクリントン・スタンリー ローン)
FWイドリサ・シラ(→ズルテ・ワレヘム 移籍金非公開)
FWジェイ・エマヌエル・トーマス(→PTTラヨーン フリー)
👊 Ryan returns!#QPR's @ryanmanning4 has been recalled from his loan at Rotherham United.— QPR FC (@QPR) 2018年12月31日
▶️ https://t.co/epXmf2qif1 pic.twitter.com/lSyBxs4WtE
FFP違反の制裁措置で、この1月の補強禁止処分が夏の段階から発表されていたQPR。もはや淡い期待を抱いていたかどうかも定かではないが、とにかく今さらそれが覆るはずもなく、余剰戦力の整理に終始した移籍市場となった。
代わりの補強ができない以上、至上命題となったのは主力の放出阻止だったが、エベレチ・イジをはじめとする中心選手は危なげなく残留。移籍市場の終盤にはストライカーのマット・スミスにミルウォールが触手を伸ばしたが、こちらの移籍も実現せず、結果として主力級の選手の放出はゼロとなっている。
もちろん彼らにとっては、この移籍市場は問題を先送りにしただけに過ぎないのも事実だ。無惨なスタートを切ったQPRのシーズンをここまで立て直したのは、スティーヴ・マクラーレンの見事な手腕、そしてニキ・ウェルズ、ジェフ・キャメロン、トメル・ヘメドといったローニーの力に頼るところが大きい。マクラーレンがQPRを離れることは考えづらいものの、夏にはそのローニーたちの残留交渉が待っているし、イジ、マッシモ・ルオンゴ、ルーク・フリーマンといった選手たちには必ずや魅力的なオファーが届くだろう。
あるいはこのローン放出の多さは、来シーズンに向けて打った最初の手と言えるかもしれない。昨シーズン、ウィコムへのローンを経て開花したイジのように、この内の少なくとも2人は来季レギュラー争いに割って入ってくるようでなければ、QPRの未来は先細りする一方だ。
【13位 スウォンジー】
IN
なし
OUT
MFトム・キャロル(→アストンヴィラ ローン)
MFジェフェルソン・モンテーロ(→ウェストブロム ローン)
FWジョルダン・アイェウ(→クリスタルパレス 移籍金非公開、完全移籍移行)
FWウィルフリード・ボニー(→アル・アラビ ローン)
📝 | Daniel James and Leroy Fer stay with #Swans this #DeadlineDay 👇https://t.co/f1Tq1KyzpJ— Swansea City AFC (@SwansOfficial) 2019年2月1日
この冬に最も波紋を呼んだクラブの1つがこのスウォンジーだ。悲しみ、怒り、その他「喜」と「楽」以外の全ての感情を内包したスワンズの冬の移籍市場は、アシュトン・ゲートでの悲運の暴動、そして17年間に及ぶヒュー・ジェンキンス時代のあっけない終焉によって幕を閉じた。
ジェンキンスがこのような形で、即ち全てのファンに後ろ指を指されながらスウォンジーを去ることになると、いったい誰が予想できただろうか。
2002年にコンソーシアムの一員としてスワンズの経営に参画した彼は、その翌年にクラブをノンリーグ降格の危機から救うと、会長になってからはクラブをまさに白鳥の如く上へと押し上げていった。彼には一貫したビジョンがあった。ロベルト・マルティネス、ブレンダン・ロジャーズ、ミカエル・ラウドルップと、彼が呼ぶ監督は皆若く魅力的なフットボールを志向する監督で、結果が出ない時期でも、ジェンキンスは辛抱強く監督への信頼を保ち続けた。
だから2016年、胡散臭さ漂うジェイソン・ルヴィン、スティーヴ・カプランのアメリカ人2名がクラブを買収しオーナーになった時も、ファンは「ジェンキンスの判断なら」とその後ろに続いた。
彼が長く、辛抱強く築き上げたスウォンジーの土台に、ヒビが入り始めた。
「フットボール」ではなく「サッカー」が好きなマイクル・ブラッドリー、永遠のNo.2ことポール・クレメント、チームの内容よりも発言ばかりが取り上げられるカルロス・カルヴァハルと、ジェンキンス(とオーナーたち)は監督を新生児が履くオムツのようにとっかえひっかえするようになった。あてのない補強が続き、かつての美しいフットボールはタウエ川の流れに乗ってどこかへと消えてしまった。待っていたのはもちろん、チャンピオンシップへの降格だ。
ルヴィン、カプランの2人にとって、所有するクラブがプレミアリーグのステイタスを失ったことによる最大の損害とは何だったのか。答えは名誉でもなく、ファンの信頼を(さらに)失ったことでもなく、大幅な収入減だったのだろう。
それは今シーズン通してのスウォンジーの移籍の動きを見れば明らかだ。加入した選手は6人いるが、彼ら全員が23歳以下の若手で、100万ポンドを超える移籍金を支払ったのはバーサント・セリーナ(300万ポンド)とジョエル・アソロ(200万ポンド)だけ。これに対し放出した選手の数は、若手のローンを含めずとも16人に上り、100万ポンドを超える移籍金で売却した選手だけでも6人(オルフィー・モーソンに至っては1500万ポンド)いる。降格にあたって何人かの選手を放出する必要があるのは当然だが、よりにもよってここまでのフリードアかつ代わりの補強もないようでは、クラブの価値を回復するための一番の手段である「プレミアリーグ復帰」など望むべくもない。
夏に移籍が決まっていたアイェウは除いても、この冬に放出されたキャロル、モンテーロ、ボニーの3人は、いずれもチームで主力級の役割を担っていた選手たちだ。特にモンテーロは、慢性的な負傷によりスタメンに名を連ねることは少なかったが、出場可能な際には必ずベンチから途中出場し、少ない出場時間の中でシーズン3アシストを記録するなど、替えの利かないスーパーサブとしての地位を築いていた。
そしてより恐ろしいのは、この放出リストにさらに2名、レロイ・フェルとダニエル・ジェイムズの名前が加わることが、デッドラインデイの土壇場に至るまで濃厚だったことだ。
フェルは母国オランダのクラブやアストンヴィラ、ジェイムズは当時首位だったリーズとの間で一度は移籍が合意し、両者ともにメディカルチェックまで行っていた。詳しくはリーズの項でも紹介するが、この2つの移籍は直前で頓挫、もっと言えばジェイムズに関してはスウォンジーが突如連絡を絶つという不可解な形で、不成立に終わった。もっとも、ヴィラへはなぜかフェルの代わりにキャロルが行くことになったし、ジェイムズの移籍に際しては、ルヴィンが資金調達のためにリーズのアンドレア・ラドリッツァーニオーナーに直接売却を約束したものの、直前にスウォンジー上層部内の別の人物が移籍を拒んだとの情報があり、これがジェンキンスなのではないかという噂が根強く囁かれている。
ファンもそうだが、何よりグレアム・ポッターのことを思うと、彼のことが不憫に思えてならない。シーズン当初から数々のデッドウッドを抱える中でのやり繰りを余儀なくされ、その中でも彼はチームにとっての最善手を見つけ続けてきた。
デッドラインデイ前最後の試合だったバーミンガム戦で、彼は試合中に3つのシステムを駆使しながら、何とかラストプレイで追い付き3-3のドローに持ち込んだ。ただこの試合にしても、先制点を取ったのは最初慣れないトップに入ったジェイムズだったし、最後のオリー・マクバーニーの同点弾をアシストしたのも途中出場のモンテーロだった。
その次の試合、即ち移籍市場閉幕後最初の試合となったブリストル・シティ戦では、我慢の限界に達したファンがアウェイにもかかわらず上層部に対する大規模な抗議を行い、ホームのファンと諍いを起こした。
それを見かねてのことかはわからないが、試合後、ヒュー・ジェンキンスは公式サイト上で辞任を発表した。
もし、ジェイムズの(一説には移籍金1000万ポンドを超えると言われた)移籍を止めたのがジェンキンスで、それが彼のオーナーたちに対する最後の反抗だったとしよう。
歴史にifは通用しないし、彼らへのクラブ売却の最終決定を下したのもヒュー・ジェンキンスその人であって、ここ3年間の悪政の責任から彼が逃れることはできないのは確かだ。それがこれまでの彼の功績を全て打ち消してしまうほどのものであるかは別として、今この瞬間を生きる我々ファンは、今この瞬間起こっていることから目を背けることなどできない。だから、スウォンジーのファンが行った行為の正当性は、ファン同士の暴力を除けば、全てのフットボールファンから認められるべきだと思う。
しかし現実として、今この瞬間スウォンジー・シティの全権力を握ることになった人間は誰か。それはジェイソン・ルヴィンとスティーヴ・カプランなのである。
ヒュー・ジェンキンスのことを毛嫌いするようになった一部のファンでさえ、彼のスワンズに対する真の愛情まで否定することはできない。愛情なしに、ノンリーグ降格が現実的になっていたクラブを、日本でサポーターズクラブが設立されるような存在にすることなど、できるはずがない。
ルヴィンとカプランはどうか。彼らにとってのフットボールは、いやサッカーは、ビジネス以上の存在にはなり得ない。スウォンジーの人々にとってのこの白鳥の意味を、彼らが真に理解することは今後一生ないだろう。この1月の移籍市場は、彼らにとっての “Swansea City” とは “$wansea City” でしかないのだと、我々に確信させてくれたのだ。
ジェンキンスは去った。ファンの望みのうち、3分の1が成就した。状況は、良くなったばかりか、むしろ悪化したのかもしれない。
【12位 ノッティンガム・フォレスト】
IN
DFヨアン・ベナルアン(←レスター 移籍金非公開)
DFモラ・ワゲ(←ウディネーゼ ローン)
DFアレクサンデル・ミロシェヴィッチ(←AIK フリー)
MFペレ(←モナコ ローン)
FWレオ・ボナティニ(←ウォルヴズ ローン)
OUT
GKスティーヴン・ヘンダーソン(→ウィコム ローン)
GKジョーダン・スミス(→マンズフィールド ローン)
DFダニー・フォックス(→ウィガン 30万ポンド)
MFパナギオティス・タヒツィディス(→レッチェ ローン)
MFボリー・アイービ(→マザーウェル ローン)
MFジル・ディアス(→モナコ→オリンピアコス ローンバック)
FWベン・ブレアトン(→ブラックバーン 移籍金非公開、完全移籍移行)
✍️ Forest sign Pele!— Nottingham Forest FC (@NFFC) 2019年1月31日
#NFFC are delighted to announce the signing of Pele from French side @AS_Monaco_EN.https://t.co/GZSxyyRQBv
フォレストのデッドラインデイは、過去にも未来にも類を見ないほどに歴史的な1日となった。何せ彼らは、「レオ」と「ペレ」を獲得したのだから!
冗談はさておくとして、非常に評価の難しい移籍市場になったことは否めない。アイトール・カランカの去就問題が渦巻く中、元日の感動的なリーズ戦の勝利で幕を開けた1月だったが、結局カランカは解任。そして後任には、チャンピオンズカップ連覇を果たした通称“Miracle Men”のメンバーだったマーティン・オニールが復帰し、非常にロマンティックなストーリーでもってカランカ辞任の醜聞にベールを覆った。
驚きだったのは、カランカ解任によって終わったと思われたジョルジュ・メンデスとの関係が、デッドラインデイの2人の獲得によってまだ続いていると判明したことだ。昨シーズン、そして今シーズンのウォルヴズの圧倒的な成功にあやかり、昨年夏には数々のクラブがメンデスとの関係強化に動き、彼のクライアントであるカランカを監督として持っていたフォレストが最も大きな恩恵を授かることになった。その結果が、ジョアン・カルヴァーリョ、ジル・ディアス、ディオゴ・ゴンサルヴェスといったポルトガル人若手3人衆の獲得である。
しかし彼らは、今のところルーベン・ネーヴィスやディオゴ・ジョタに続くことができていない。1350万ポンドの移籍金で加わったカルヴァーリョは節々に才能の片鱗を見せるものの、逆に言えばそれくらい。カランカが自ら辞任を選び、3人衆の1人であるディアスが事実上の系列クラブであるオリンピアコスへローンスイッチした1月中盤には、フォレストとメンデスの提携は失敗の歴史となったかに思えた。
そこで出てくるのが、前述の「レオ」と「ペレ」である。ウォルヴズからの獲得となったボナティニ、そしてメンデスのクライアントであるペレの獲得は、当然共にメンデスの意向が働いた移籍と見られ、純粋な戦力補強としての意味合いもさることながら、今後も彼らの関係が続いていくことを暗に示したという意味でも見逃せないものとなった。
ただ気がかりなのは、この中にオニール監督の意向で獲得したと見える選手がほとんどいないことだ。唯一最初の補強となったベナルアンにはその匂いを感じることができなくもないが、他は全てオーナー、あるいはメンデス案件であることが明らかである。もちろんポジションの希望などは伝えているはずだが、獲得希望を公言していたアイルランド代表時代の教え子、ストークのジェイムズ・マクレーンの移籍は結局実現せず、英国系のチームを好むイメージのあるオニールが就任したのにもかかわらず、この1月には英国系の選手を誰も獲得できなかった。
思えばアストンヴィラでのスティーヴ・ブルースも、メンデス介入による歪なパワーバランスの中で板挟みになり、結局は解任されてしまった。オニールが彼と同じ轍を踏まないことを願うばかりだ。
【11位 ブラックバーン】
IN
MFハリー・チャップマン(←ミドルズブラ 移籍金非公開)
FWベン・ブレアトン(←ノッティンガム・フォレスト 移籍金非公開、完全移籍移行)
OUT
DFポール・ダウニング(→ドンカスター ローン)
MFケイシー・パーマー(→チェルシー→ブリストル・シティ ローンバック)
Welcome back, @HarryChapman101! 🌟 👨#Rovers pic.twitter.com/KTnUlwbJxI— Blackburn Rovers (@Rovers) 2019年1月28日
ブラックバーンも、この冬は「獲得」よりも「残留」に重きを置いていたチームだ。上の表を見ればわかるように、彼らの冬は大成功に終わった。
もちろんこれは、ブラッドリー・ダックの残留を意味する。半年間で暴騰を重ねたプライスタグのおかげか、どのプレミアリーグのクラブもこの冬には手を出せず、少なくともあと半年はランカシャーで彼の笑顔を見られることになった。
それもあって、1月のブラックバーンを語る上では、ピッチ上での躍進により関心を寄せるべきだ。昨日発表されたリーグの月間表彰では、選手部門がセント・ジェイムズ・パークへの感動の帰還も果たしたアダム・アームストロング、監督部門がトニー・モウブレイと、見事ダブル受賞を果たした。
この1月は、今シーズンここまでに迎えた好調期とは少し異なる特徴を持つ。それはアームストロングをはじめ、ダック以外の選手の活躍が目立っていた点だ。実際のところ、彼本来のパフォーマンスを考えれば、1月のダックは取り立てて好調というわけではなかった。彼が悪かったと言っているわけではなく、彼以外の選手がそれ以上の活躍を見せていたのだ。
リーグに認められたアームストロングの働きについては割愛するとしても、中盤やフルバックで大きなステップアップを遂げたルイス・トラヴィス、そしてチャーリー・マルグルーも不在の中センターバックで一気に信頼を掴んだジャック・ロドウェルについて触れないわけにはいかない。あるいは夏にフリーで手に入れた彼の獲得こそが、今シーズンのブラックバーンにおける最も重要な契約となる可能性さえある。
ブレントフォード戦こそ残念な負け方を喫したローヴァーズだが、プレイオフ進出の可能性は十分に残されており、古豪復活の時も近いか。
【10位 ハル】
IN
GKカラム・バートン(←チェスターフィールド ローンバック)
DFリアム・リッジウェル(←ポートランド・ティンバーズ フリー)
MFマーク・ピュー(←ボーンマス ローン)
OUT
DFトミー・エルフィック(→アストンヴィラ ローンバック)
FWウィル・キーン(→イプスウィッチ ローン)
📝 Hull City are delighted to confirm the signing of free agent Liam Ridgewell.#WelcomeLiam | #hcafc | #theTigers pic.twitter.com/iVaigth5av— Hull City (@HullCity) 2019年1月31日
移籍市場への噂が過熱していく11月から12月にかけての時期に大きく調子を上げたハルは、ライバルチーム、あるいはメディアにとって、いわば格好の「エサ」だったに違いない。そんな中でも、ジャロッド・バワン、カミル・グロシツキといったスター選手を守り抜いたことで、この移籍市場での動きには及第点以上の点数をつけていいだろう。
ただ、心配なのはセンターバックだ。1月早々にエルフィックをヴィラにリコールされ、ようやく固まりつつあったセンターバックの布陣が振り出しに。その後も途端に守備が崩壊することはなかったものの、今度は残った選手たちに怪我人が続出し、無敗が途切れた1月26日のブラックバーン戦では、試合前のウォームアップでリース・バーク、試合中にオンドレイ・マズーフと2人のセンターバックを失い、3失点を喫した。
一応は経験豊富なリッジウェルを獲得したものの、彼はまだ出場可能な状態にはなく、エルフィックの穴を埋めるまでには時間がかかりそう。またそれ以外のポジションを見ても、実質的な新戦力はボーンマスから獲得したピューだけで、1月の上積みという点では多くは期待できない。
それでも、バワンとグロシツキ、またマルクス・ヘンリクセンといった選手たちを残せただけでも、満足しなければいけないのが本音だろう。1月初頭には報道が盛んだったクラブ売却の話もそれから全く音沙汰がなく、アッセム・アラムオーナーは得意げにこの1月を成功と評した。
残念なのは、この1月の補強次第ではプレイオフ争いすら飛び越えていくのではないか、というほどの勢いを、彼らが11月頃から見せていたことである。クラブ内部の実情をよく知る選手ら関係者はいざ知らず、外からあの6連勝を見せられたファンは、あと少しの補強さえあれば…という期待を抱いていたに違いない。
ベン・ウッドバーンなど獲得を望んでいた選手の他にも、アシュリー・フレッチャーやマシュー・コノリーといった選手に関しては、相手方からローン移籍を持ちかけられていたとの情報もある。ならばその選択肢を取らなかったのはなぜか。この薄い選手層にあって、オプションは少しでも多い方が良かったのではないか。こう思う方が必然だろう。
これに対するアラム側の言い分が何であるにせよ、それがファンにとって好ましくない事実の発露になるであろうことは想像に難しくない。チームの好調ぶりが転じて、クラブの一番上に巣食う問題を表面化させているのは、何とも皮肉なことである。
【9位 アストンヴィラ】
IN
GKロヴレ・カリニッチ(←ヘント 540万ポンド)
GKジェド・スティール(←チャールトン ローンバック)
DFトミー・エルフィック(←ハル ローンバック)
DFコートニー・ホース(←ウォルヴズ ローン)
DFタイロン・ミングス(←ボーンマス ローン)
DFフレデリック・ジルベール(←カーン 450万ポンド)
MFトム・キャロル(←スウォンジー ローン)
MFジョーダン・ライデン(←オールダム ローンバック)
MFアンドレ・グリーン(←ポーツマス ローンバック)
OUT
GKアンドレ・モレイラ(→アトレティコ・マドリー ローンバック)
DFフレデリック・ジルベール(→カーン ローン)
DFジェイムズ・ブリー(→イプスウィッチ ローン)
DFジェイコブ・ブドー(→スカンソープ フリー)
MFヤニック・ボラシー(→エヴァートン→アンデルレヒト ローンバック)
FWスコット・ホーガン(→シェフィールド・ユナイテッド ローン)
FWラシアン・ヘップバーン・マーフィー(→ケンブリッジ ローン)
Our Xmas wishlist...— Aston Villa (@AVFCOfficial) 2018年12月21日
Villa Guess Who 🔲
L̶o̶v̶r̶e̶ ̶K̶a̶l̶i̶n̶i̶c̶✅
Alan Hutton face mask 🔲
#LovreIsland #AVFC pic.twitter.com/PCwbm1Rsmk
ローンバック組の中にもトップチームに割って入る選手がいることを考えれば、ヴィラはこの冬屈指の刷新を行ったチームの1つである。しかしそれ以上に、何にも増して大きかったのは、ウォルヴズとのすったもんだの末にタミー・アブラハムを残留させられたことに他ならない。
現在、ジャック・グリーリッシュを欠く中で何とか食い繋いでいるヴィラにとって、あるいはグリーリッシュ以上の依存度と言っても過言ではない存在がチェルシーからローン中のアブラハムだ。単純に、ビリー・シャープを除けばリーグ内でアブラハムよりも多く点を取っている選手がいないということに加え、今シーズン急成長を見せるオフザボールの動き、1トップとしての味方を活かす役割と、まさにワンアンドオンリーの存在に成長した(本来、ヴィラほどのクラブで、ローニーがワンアンドオンリーになってしまってはまずいのだが)。
結局は土壇場でウォルヴズへの完全移籍を思い留まった彼だが、これは賢明な判断だろう。ヴィラでは出場機会どころか自身を中心としたフットボールが約束されていて、給与面も申し分ない。特にブリストル・シティでのブレイクスルーの後にスウォンジーでの挫折を経験したアブラハムにとっては、このタイミングで移籍するメリットがどこにもなかった。今はまだ焦らずとも、彼がいずれプレミアリーグの選手になることは、必ず約束されている。
そして、アブラハム抜きには今のポジションなど考えられなかったヴィラにとっても、あと一歩で考えたくもないような事態が現実になりかけていたことを思えば、彼の残留の他に何を望もうと言うのだろう?
当然、粗探しはいくらでもできる。あれほど悩まされ、誰もが補強を望んでいた守備陣の補強は、本当にこれでいいのだろうか?エルフィック、ホース、ミングス。誰一人として守備陣の中心で圧倒的な能力を発揮していけるような選手ではなく、ミングスに至ってはセンターバックとして取ったのかフルバックとして取ったのかすら不透明で、これではせっかく再起を期してやってきた彼がかわいそうだ。そして、私はフレデリック・ジルベールという選手のことはよく知らないが、この状況で安くない移籍金を支払って獲得して、そのままローンバックさせるほどの余裕が今のヴィラに本当にあったのか、甚だ疑問でならない。
また昨シーズン後の失敗を経て、彼らが再びローンマーケットにのこのこと出向いたことも、不可解といえば不可解だ。もちろん数はたったの2人だし、忌まわしきFFP回避の目的があることは重々承知している。その上で言うが、彼らはローン補強の持つ限界、そして蛍の光のような一瞬の成功をもたらす代わりに背負う必要のある長期的なリスクを理解しているはずだ。
実際に、この1月にも、あれほど期待を集めていたヤニック・ボラシーがひっそりとクラブを去った。彼は爪痕を残すことすらできなかったが、活躍した選手の例をとっても、もうスノッドグラスも、グラッバンも、ジョンストンも、ヴィラにはいない。
まだある。人員整理だって、ディーン・スミスが当初思い描いていたほどには進まなかった。実力のある、言い方を変えれば強いエゴを持った何人かの選手たちが、未だに18人の外にあぶれてしまっている。
無事移籍させることができたスコット・ホーガンのような選手にしても、よりにもよって昇格争いの直接のライバルであるシェフィールド・ユナイテッドに放出するような事態は、何とか避けられなかったのだろうか?
まあ、なんにしても、アブラハムの残留だけでこれら全てにお釣りが来るということは先に書いた通り。一応は守備の改善を図ったことによって、チャンピオンシップでの4年目を迎える確率は、12月よりも少しだけ下がったはずだ。
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