(11/14追記)
この記事を執筆した後、ガーディアンのデイヴィッド・コン記者がプロジェクト・ビッグ・ピクチャーにおけるFA グレッグ・クラーク会長(当時)の積極的な関与を報じました。
この記事の内容と合わせて、こちらの記事もぜひご覧ください。
日曜日、代表ウィークの何気ない平穏な休日は、テレグラフが出し抜いた1本の独自スクープによって、瞬く間に「開戦日」と化した。
プロジェクト・ビッグ・ピクチャー(以下“PBP”と呼ぶ)。そこには大義、懐疑、そして論議が入り交じる。3年にも渡って進められた密室での会議が、それぞれが持つ既得権益が、提案者に付き纏う悪評が、その物語をかつてないほどに複雑なものにする。
Once in a lifetimeのパンデミックが、英国フットボール界に1992年以来の衝撃を与えようとしている。その旗手を担ったのはリヴァプールのジョン・W・ヘンリー、マンチェスター・ユナイテッドの悪名高きグレイザー一家、そして他でもないEFL会長のリック・パリーだった。
この記事ではEFLからの視点を中心に、現在大論争を巻き起こしているPBPについて解説していく。
PBPで何が変わるのか?
PBPによる提案を以下の表にまとめた。「主要な」としてあるのは正式な文書が公には出回っておらず、あくまで各メディアによって報じられた内容のみを書き記したためである。
(リークされたのは最新の第18版の内容)
(特に重要と思われるものを赤字表記)
まず改めて個人的な立場を言明しておくと、私はここ数年プレミアリーグの試合は数えるほどしか見ておらず、専らEFLに興味関心を向けてきた。最大の問題意識は下部クラブの厳しい財政状態にあり、その是正をプライオリティにすべきと考えている。
その立場から言えば、控えめに言ってもこの案は熟考に値するものだ。
PBPには非常にわかりやすい懐疑論の余地が入っているため、多くの反対意見が湧き上がるのも無理はない。しかし冷静に案全体を見渡した場合には、数々のポジティヴな点が浮かび上がる。中でも最大のポイントとなるのは、プレミアリーグ収入のEFLへの分配比率を25%に引き上げるという提案だ。
これは現行の8%という意味不明な数字を持ち出すまでもなく、長年切望されてきたピラミッド全体への富の再分配の実現に向けた歴史的な一歩であり、パンデミック前から破綻しかけていた下部リーグの財政にとって非常に大きな意味を持つ。
言うまでもなく、現在各リーグ間・クラブ間に横たわる大きな財政面でのギャップを生み出したのは、1992年のリーグ分裂騒動だった。そして当時、初代プレミアリーグCEOとしてその流れを生み出したのが、リック・パリーその人だった。
その時以来、プレミアリーグがフットボールリーグに慈悲をかけることは一度たりともなかった。1995年にCEOを退任したパリーには、一つ大きな心残りがあったという。それはプレミアリーグとEFLの放映権収入をまとめ、その4分の1をEFLに再分配すること。実のところ、彼はEFL会長の職を勝ち取った1年前の面接の段階でこの構想を語り、バートンのCEOを務めるジェズ・モクシーからの賛同を得ていたという。
Explained: United, Liverpool and Parry spark 'nuclear war' in English football
パリーの悲願という点で見れば、放映権分配の他にも彼が就任時から「根絶すべき悪」と言い続けてきたパラシュート・ペイメント(競争を不公平にし、他クラブへの分配金が不当に少なくなっているという批判が絶えなかった)の撤廃、そして春先から取り組んできたEFLクラブへの2億5000万ポンドの救済金パッケージといった要素がPBPの中に組み込まれている。
EFLのトップに座る人物がリーグカップの廃止を訴えるのは一見奇妙なことだが、これもEFLにとって大した収入源になっているわけではなく、放映権もEFLとSkyが結んでいる現行のリーグ戦の契約にパッケージ化されているだけという現状を考えれば、ローコストなトレードオフの材料と見ていいだろう。
繰り返すが、パリーのプライオリティは(私と同じく)EFLクラブの財政健全化のみに置かれている。
一方それに対して、ファンが「フットボールの終わり」を危惧する部分についても触れておかなければ、決してフェアな議論とは言えない。
言うまでもなくそれは、ビッグクラブによる“Power grab”、即ち権力の掌握とみなされる部分だ。
特に英国中のフットボールファンが声を張り上げているのは、プレミアリーグの設立以来最大のポリシーでありリーグの特徴とされてきた「各クラブ平等の原則」が崩されようとしていることだ。“One Club, One Vote”システムの撤廃、(プレミアリーグ内での)放映権収入格差の拡大といった要素は、「古き良きフットボール」を未だ夢見る多くのファンにとって受け入れ難い提案だ。
なぜなら、少しばかり疑い深い人であれば誰しもが、その不平等の先に“Closed Shop”の魅力なきリーグを想像するからである。巨額の富を得たビッグクラブとのリーグ内格差は広がる一方ではないのか?他クラブの買収交渉に干渉できる立場になったビッグクラブは、新たなマン・シティの誕生を許さないのではないか?クラブ別の放映権管理が可能になればリーグが一括販売する放映権の値段はどうなるのか?日程が楽になり得をするのは誰なのか?欧州スーパーリーグの設立に繋がるのではないか?果ては降格システムすらなくなるのではないか?
(それは紛れもなく事実だが)「プレミアリーグの富を生み出しているのは誰のおかげなのか」とでも言いたげな提案者のプロフィールも事をややこしくしている。彼らはあのフェンウェイグループであり、あのグレイザーズだ。「イギリス土着の文化がアメリカ式に染められる」、その懸念に対する人々の感情的な反応も想像に難しくない。
なぜPBPは今提案されたのか?
ここまではPBPの良い点と悪い点を(かなり大雑把に)説明してきた。次は現在に至るまでの経緯を見ていく。
PBPについて考える上で重要な前提となるのは、現在英国フットボール界、特にEFL全体を覆う深刻な財政危機である。
その要因は言わずもがな、3月からの新型コロナウイルスの流行にある。しかしそれが諸悪の根源かと言われれば、少し語弊がある。実際は、壊れかけだったフットボール界にとどめを刺した、と言った方が正しい。
その実情については、このブログでも何度も取り上げてきた。ベリーの一件はその代表格であり、穴だらけのFFPルールは「遺憾の意」以下の抑止力しか持ちえず、数知れずの野心家たちが自らのステイタスのために偉大な文化を危険に晒した。
選手の給与総額がクラブの総収入を上回るという状態が多くのクラブで常態化していたリーグ(皮肉なことに、その状況を生んだのも煌びやかな最上部だ)にとって、パンデミックはあまりにも強大な敵だった。そしてその煽りを真正面から食ったのは、マッチデイ収入に頼らざるを得ないLeague One, League Twoのクラブだった。
プレミアリーグ、FA、政府などへの再三に渡る救済パッケージへの呼びかけにも関わらず、十分な支援の動きが地表に顔を出すことは終ぞなかった。希望と共に迎えた新たなシーズン、計画されていた段階的なファンの入場受け入れは、政府によって直前で白紙撤回された。
EFLの多くのクラブには、もう時間がない。レイトン・オリエントのナイジェル・トラヴィス会長は、何らかの金銭援助がない限り、いくつかのクラブはもう2ヶ月と持たないと訴える。
EFL clubs 'will disappear in 5-6 weeks'
PBPはこれまでのところ、EFLへの具体的な支援の道筋を示した初の計画だ。それに加え、前述したような長期的なソリューションも含まれている。火曜日、全クラブの代表者が出席したEFLの説明会では、「10分の9」のクラブが提案に賛成したという。
Bosses from EFL's 72 clubs held divisional meetings this afternoon & 5 of them have just been talking to a few journos. The headline? I misjudged Project Big Picture's popularity in EFL when I said 2/3 would like it. Sounds like 9/10 of them LOVE IT! Total support for Parry, too.
— Matt Slater (@mjshrimper) October 13, 2020
一方でトランメアのマーク・パリオス、アクリントン・スタンリーのアンディ・ホルトといった我々が常に耳を傾ける必要のある人物は、公に反対の立場を表明している。ピーターバラのダラー・マッカントニーは、PBPが救済金の給付をいたずらに遅らせるだけだと話す。
That then is a blatant lie from Jez Moxey. Was he asleep when I expressed my grave concerns at the meeting over this diabolical power grab. I am vehemently against this deal in it's present form.
— Clive Nates (@cliven7) October 13, 2020
The acceptance of this deal without question by so many clubs is deeply concerning. https://t.co/MQlBE2hqyE
'Project Big Picture a distraction and EFL needed £250m yesterday,' talkSPORT told
彼らのような業界屈指の知性や、お馴染みの“Price of Football”ことキーラン・マグワイアが熱心に反対意見を主張する時、そこには明らかな懸念事項が浮かび上がる。
留意しなければならないのは、PBPがこのコロナ禍の中で生まれたものではなく、その実3年前から内密に議論され続けてきた大掛かりな計画であるという不都合な真実だ。
現在出回っている文書の文責の所在、またテレグラフに情報をリークした人物の素性については、今のところ全く明らかになっていない。しかし計画の端緒となったのは明確にジョン・W・ヘンリーとジョエル・グレイザーの間で行われてきた会合だとされており、チェルシーのブルース・バックもこの話し合いに深く関与してきた。他のビッグ6クラブもある段階では計画を知らされていたとされるが、現在のスタンスについてはわかっていない。
パリーが計画に加わった段階についてはわかっていないものの、彼だけでなくEFLのボードもこの計画の存在を以前から認識していたという。FA会長のグレッグ・クラークは話し合いに参加していたことを公に認めたが、「フォーカスがフットボール界のバランスを崩しビッグクラブを利する方向に進んだ」時点でそこから離脱したとしている。
Our chairman Greg Clarke has written to FA Council members ahead of October meeting
“The Athletic”によれば、パンデミックさえなければ、パリーらは4月にもこのキャンペーンを始めようとしていたようだ。これが真実だとすれば、PBP推進勢力はコロナ禍の苦境を利用し、長年練り上げてきた計画の賛同を取り付けようとしたのではないかという仮説が持ち上がる。
この説の信憑性を強める報道も出てきている。“Times”のマーティン・ツィーグラー記者による13日付の記事では、最近アメリカの投資ファンドTPGキャピタルがEFLに対し3億7500万ポンドで株式の20%を取得するオファーを出したものの、パリーを中心とするEFL上層部は各クラブへの相談もないままにこの申し出を却下したという。投資ファンドへの株式売却の是非は一旦さておくとして、これだけの財政危機の中でステークホルダーへの相談もなくオファーを退けるという行為には、些か疑問が残る。
EFL rejected £375m offer from American firm
さらにパリーは、プレミアリーグ内で提案が否決された場合、PLを離脱してEFLのバナーの下新たなリーグを結成するようPBP推進勢力に促したとも言われている。これは当然PLの他のクラブの怒りを買い、一部の代表者は「パリーが辞めない限り何もしない」と推進勢力に対し態度を硬化させているという。
PL clubs to declare war on Liverpool and Man Utd over Project Big Picture
誰がどうするべきなのか?
大多数のファンが怒り狂い、リーグ間・クラブ間・代表者間の溝が深まり、下部クラブは破産寸前。明らかに(不名誉極まりない)歴史的な瞬間を迎えている英国フットボール界には、どんな明日が待っているのだろうか。
まずはっきりさせておきたいのは、現状のPBPに対する全ての批判は、懐疑主義に基づいたものでしかないということだ。「○○するかもしれない」、「○○になるかもしれない」。それらは全て「の恐れ」であり、(まだ)現実ではない。
もちろん、最悪を恐れて行動するのは危機管理の鉄則だ。そしてPBPが意図する、特にガバナンス面での変革は、恐れるに足るだけのラディカルな提案だ。でも、だからといって「パリーが古巣リヴァプールを利するために立場を悪用している」とか、「ビッグクラブは降格をなくして自分たちが圧倒するだけのリーグを作るつもりだ」とか(そんなことをしたら一番損をするのは彼ら自身だ)、「どうせ案が通った後に下部リーグ救済案はすぐ撤廃される」とか、そういったナンセンスな仮定を議論に持ち込むべきではない。しっかりとした利害対立の事実推定から、この問題を考える必要がある。
その場合にまず立ち寄るべきは、「PBPで一番損をするのは誰か」という視点である。ビッグクラブのメリットは考えるまでもない。また勘違いされがちな部分だが、PBPはプレミアリーグと下部リーグとのギャップを縮めるための施策だ。その理由は最初に書いた通りであり、この点からEFLの大半のクラブがPBPの恩恵を受けることになる。
唯一のビッグルーザーは、ビッグ6以外のプレミアリーグのクラブである。リーグ間のギャップは縮まるが、リーグ内でのギャップはPBPによって間違いなく広がるだろう。公平な議決権も失い、放映権収入も間違いなく減ってしまう。ミラクル・レスターのようなことが二度と起こらないとは思わない(彼らが成功した要因は何一つPBPによって制限されないからだ)。ただパラシュート・ペイメントの撤廃はその辺一帯のクラブの財布の紐を一気に固くするだろうし、もしかしたら億万長者からの買収の申し出もブロックされてしまうかもしれない。
即ち、PBPは今のままではプレミアリーグからの承認を得られないため、間違いなく実装されることはない。既にウェストハムなどが反対の立場を表明しているほか、多くのクラブが密室での会議に怒りを募らせている。仮にビッグクラブがリーグ離脱を仄めかして他クラブを懐柔したとしても、最終的にはFAがPL発足時に制定した拒否権を行使するだろう。
West Ham 'against Big Picture plans'
Premier League clubs could show 3pm matches in UK under Big Picture plans
そもそも下部リーグが最大の利点と考える救済案の数々に関しても、不明瞭な点はいくつかある。2億5000万ポンドの救済金は単なる前払いだ。分配が25%に増えるといっても、18チームになることで試合数が減り、各チームが独自に8試合分を抜き取った中央管理の放映権に、世界を包むコロナ禍の中今後も今と同じだけの値が付くだろうか?結果的にEFLクラブが得る収入は、今よりもずっと小さなパイからしか捻出できないのではないだろうか?
Many in the EFL seem to think that Project Big Picture is £250m bailout followed by 25% of the PL TV rights.
— PriceOfFootball (@KieranMaguire) October 13, 2020
If you look at the small print the £250m is an advance of money, which will then be subtracted from the 25%.
それでも、これら全てを鑑みたとしても、私にはPBPを時間の無駄だと切り捨てることはできない。
なぜなら、それは今のところ、体力の限界に近付いているEFLのいくつかのクラブを救うための唯一の手段だからだ。
今回の一連の動きの中で個人的に最も驚かされたのは、プレミアリーグ及び政府が迅速にPBPを激しく非難する声明を出したことだ。
Reform in best interests of game - Parry
リック・パリーは3月のリーグ戦中断直後から、一貫して関係各所に救済パッケージという「弱者への慈悲」を求めてきた。もちろんプレミアリーグも、政府も、その対象だった。
プレミアリーグは話し合いを進展させることができなかった。リーグ戦再開前は、リーグ打ち切りとなった場合のTV局への違約金支払いなど、自分たちの事情で手いっぱいだったのだから仕方がない。でもその後、ひとまず1億2500万ポンドの連帯金の前払いこそ行ったものの、「寝る間も惜しんで」コンセンサスの確保に奔走していたというリチャード・マスターズは、EFLとの交渉の中で何一つとして意味のあるアイデアを生み出すことができなかった。故に彼は、PBPの交渉を日曜日に初めて知ることとなったのだ。
ジリンガムのポール・スカリー会長によれば、リック・パリーがPBPの推進を決めた決め手の一つは、プレミアリーグからパリーに届いた2500万ポンドの救済金の申し出だったという。パリーの要求額2億5000万ポンドに対し、2500万ポンドである。さすがにその後は条件を上げたオファーもあったものの、そこには必ず「シーズン打ち切りの場合は降格なし」などのトレードオフ条件が付いていた。確認のため書くが、プレミアリーグはこの夏、移籍市場において全体で10億ポンド以上を支出している。
Premier League's derisory EFL bail out offer amid Project Big Picture proposal
政府、即ち文化大臣のオリヴァー・ダウデン。キーボードを叩くだけでも不愉快な名前だ。リーグ中断中にはフットボールを国威発揚の道具とみなし、救済金の要請には「フットボールピラミッド内で助け合ってほしい」と宣い、ファンの動員再開を大した説明もなく白紙撤回したオリヴァー・ダウデンだ。
彼は月曜日の朝、BBCで「今はその時ではありません。現在のフットボール界の至上命題は、特にEFLがクラブの存続を可能にするリソースを確保することですが、この案はプレミアリーグを通じたサポートを全く得ていません」と話した。ダウデンによれば、救済金の遅滞及びファンの動員延期によって瀕死の状態にあるEFLのクラブを救うべき時期は、「今ではない」のだという。
今私が最も腹立たしいのは、プレミアリーグも、政府も、FAも、アメリカ人2人を除く世界中の誰しもが、イングランドの国技であり誇るべき伝統であるフットボールピラミッド全体を救うための手立てを提供できていないということだ。
真にフットボールを愛する人の中に、限られた(しかもフットボールをビジネスとしか捉えていない)一部の人間が支配する英国フットボール界を見たがっている人などいない。いるはずがない。
でも、今はもうそれしかないのだ。
自分の家が燃えているところを発見した時、隣人が意地の悪い笑顔を浮かべながら10万円で消火器を売ってきたとしても、誰もがそれを買って火を消そうとするはずだ。そうでもしない限り、かけがえのないものがなくなってしまうのだから。
もちろん今のPBPの案をそのまま通すべきとは思わない。特にガバナンスの部分、放映権の部分、ローンシステムの部分などは絶対に協議が必要だ。
でも、どこかではおそらく犠牲を強いられる。なぜならヘンリーやグレイザーは、真にピラミッド全体のことを気にかけてはいないからだ。彼らにとってそれはビジネスであり、無償の愛ではない。故に相手にトレードオフを求める。
プレミアリーグの他のクラブにそれを批判する権利はない。彼らとてトレードオフを求めているからこそ、今の今までEFLへの救済パッケージの議論は前に進んでこなかったのだ。カフェでも、レストランでも、コンビニでも、実家以外の場所では食事に対価を求められる。それと同様に今のフットボール界を動かすものも、「美しきフットボールへの愛」などではない。「金」なのだ。
ならば何もしない善人よりも、何かを与えてくれる偽善者の方がよっぽどマシな存在だ。1週間前、クリスタルパレスのスティーヴ・パリッシュ会長は自身が連載する“Times”のコラムで、「プレミアリーグのクラブは不当に槍玉に挙げられており、我々の金銭をシェアする必要はない。競合他社に救済金を求めるような業界など他には存在しない」と驚くべき言葉を書き連ねた。
No other industry is asking firms to bail out competitors
ならば彼はどの口で、ビッグクラブが自分たちの立場を強化しようとする不当な動きを糾弾できようと言うのだろうか。どの口で、強固な糸を張るこの国のフットボールピラミッドを守るべきだと言えるのだろうか。
EFLのクラブがPBPに渋々賛成し、プレミアリーグのクラブの立場を脅かそうとする理由は、彼らが何ら自分たちを救うための代案を示さないからである。
ヘンリーやグレイザーがそうであるように、EFLクラブのオーナーたちもセルフインタレストのために動いている。そうでなければ、地域コミュニティの中心に存在するフットボールクラブを存続させることができない。それは現在英国フットボール界が置かれた支配的かつ絶望的な状況を、実に端的に表している。
誰しもにとって苦しい時間が続く。
「悪魔に魂を売った」とされるリック・パリーの辞任を望む声は日々熱を増している。各クラブのオーナーにとっては、一日一日が生き残りをかけた戦いだ。リヴァプールとマンチェスター・ユナイテッド以外のビッグクラブは、まだ態度を決めかねている。ビッグ6のサポーターズトラストは、連名でPBPに抗議する声明を発表した。
Joint Statement: Project Big Picture - MUST News
またEFLにとっては何とも間の悪いことに、CEOのデイヴィッド・ボールドウィンが来年4月をもって退職することを発表した。元々家庭の問題を抱えていた彼にとって、就任後突如降って湧いたコロナウイルス対応による激務は、到底長く職を続けられるようなものではなかったのだという。
どうやら本当に、PBP問題は辞任とは関係ないようだ。
EFL chief executive David Baldwin resigns
あまりにも長かった就任1周年を迎えたパリーは、今後も難しい立ち回りを求められることになる。EFL間でも少なからず利害の対立は発生しており、何よりファンからの苛烈な辞任要求が彼を襲う。この仕事は何とも貧乏くじだ。EFLのトップという立場から誰しもを納得させ、誰しもを笑顔にする施策を打ち出すことなど、かのアイザック・ニュートンをもってしても不可能に思える。
それでも、私はこうも思う。仮にパリーがEFLのための施策を捨ててでもリヴァプールのための施策を押し通そうとし始めたら。仮にパリーがこれまでの救済金交渉をまともに行わず、PBP導入という結論ありきの態度を取っていたのだとしたら。彼を親の仇の如く叩くのは、それからでも遅くはないはずだ。
重要なのは、関係者全員が交渉の席に着くことだ。何の意味も持たないセンチメントを優先させ、現状唯一のアイデアであるPBPを鼻であしらった場合、次に待つのは間違いなく業界全体の破滅なのだ。
確かにPBPにはいくつかの恐ろしいアイデアが含まれている。一方で至るところに、この世の間違いを是正するパッチになり得る光も見て取ることができる。ヘンリーとグレイザーの「サッカーへの愛」をテストしなければならない。そうしなければ、何も始まらない。
時間は我々の味方ではない。彼ら全員の思いが試されている。英国フットボール界は今、内戦に突入した。
参考文献一覧 (順不同)
Explained: United, Liverpool and Parry spark 'nuclear war' in English football
Breakaways, borrowing and bailouts: Solving English football's cash crisis
Plan to mend football pyramid's great crack should not be swept off table | David Conn
Project Big Picture Q&A: what are the proposals and what happens next? | Paul MacInnes
West Ham 'against Big Picture plans'
'Project Big Picture a distraction and EFL needed £250m yesterday,' talkSPORT told
EFL chief wants Liverpool and United applauded for 'Project Big Picture' proposals
Premier League clubs could show 3pm matches in UK under Big Picture plans
EFL rejected £375m offer from American firm
EFL chief executive David Baldwin resigns
EFL clubs 'will disappear in 5-6 weeks'
How Project Big Picture changed the politics of football in one swoop | David Conn
Explained: Project Big Picture - the winners and losers
Our chairman Greg Clarke has written to FA Council members ahead of October meeting
Joint Statement: Project Big Picture - MUST News
PL clubs to declare war on Liverpool and Man Utd over Project Big Picture
Reform in best interests of game - Parry
Premier League's derisory EFL bail out offer amid Project Big Picture proposal
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