18/19シーズン (今更選ぶ)年間最優秀チーム - EFLから見るフットボール

18/19シーズン (今更選ぶ)年間最優秀チーム



シーズン終了から2ヶ月が経ち、次の週末にはもう19/20シーズンが始まる。

こんなタイミングで何をのこのこと、という感じもするが、一応の区切りとして、18/19シーズンの振り返りをしておきたい。

My Fantasy XI
昨シーズンに活躍が目立った選手の中から、私が選ぶチャンピオンシップの年間最優秀チームを組んでいくことにしよう。言うまでもなく独断と偏見が多分に入り交じった選出なので、ぜひコメント欄やTwitterの方で、それぞれのご意見を頂戴したい。その方が、きっとみんな楽しいはずである。

なお、イングランド下部の話をする以上、ここでのシステムは伝統の4-4-2とさせていただく。またより多くの選手にスポットを当てるために、1チームにつき選出人数は2人までという縛りをつけた。本当は一人ずつでもよかったのだが、DFのところにどうしてもセットで選びたい選手たちがいたので、2人ということにした。



GK
ここは11人の中で最も早く決まったポジションだ。昨シーズンの圧倒的なパフォーマンスを鑑みれば、ダレン・ランドルフ(ミドルズブラ)以外に相応しい人物は考えられない。

今シーズン、46試合フル出場を果たしたゴールキーパーは4人いたが、その内3人はノリッジ、シェフィールド・ユナイテッド、ウェストブロムと1位、2位、4位のチームに所属していた。残る一人であるランドルフのミドルズブラは、最後までプレイオフ争いこそ演じていたものの、過度に守備的な戦術を用いたせいで常に相手に押し込まれる苦しいシーズンを過ごした。その中での46試合41失点(シェフィールドUと並ぶリーグ最少失点)というボロの数字は、ひとえにランドルフの実力によるものが大きい。

今シーズンの出場時間平均での失点数が1点を下回ったのは、ランドルフとディーン・ヘンダーソン(シェフィールド・ユナイテッド)の2人のみ(共に0.89)。共に18/19シーズンは4,140分フル出場を果たした両者だが、枠内シュートの数に対するセーブ率を見るとランドルフの.763(リーグトップ)に対し、ヘンダーソンは.735(リーグ2位)。完封数こそヘンダーソン(21)が2つ上回っているものの、チームの差、試合を見た印象での肌感的な部分も加味すれば、ランドルフの方を上に取るのが妥当だろう。

もちろんヘンダーソンの活躍も特筆すべきものであることには変わりないし、出場数が少ない中でも、戦力外の状態から這い上がったキーラン・ウェストウッド(シェフィールド・ウェンズデイ)のように印象的な活躍を見せた選手もいた。なにより、たったこれだけの根拠でもって、ここまで名前を挙げてきた選手たちがジャック・バトランド(ストーク)よりも優れた選手なのだという暴論を振りかざすつもりもない。
ただ、こと今シーズンに限っては、ランドルフがベストのキーパーだったということだ。


DF
最初に左右のフルバック。ここはどうしても同じチームから、ジャマール・ルイス、マックス・アーロンズ(共にノリッジ)の2人を揃って選出したい。

ここでは細々しい理屈ではなく、18/19シーズンのリーグ優勝を果たしたノリッジ・シティにとって、いかにこの2人が象徴的な役割を果たしていたかという点を強調することにしよう。以前にも書いたが、ノリッジはスチュアート・ウェバーという大変に聡明なダイレクターの下で、クラブとして生まれ変わる決意を抱いた。その決意を結果に結びつけるためには、一にも二にも、ウェバーがチーム作りの軸に据えた若手の活躍が不可欠だった。

今シーズン、常に90分間上下動を繰り返し、攻め上がったファイナルサードでは成熟した連携を見せ攻撃の中心を担ったルイス、アーロンズの2人は、まさしく新生ノリッジの輝かしい未来を体現する若者たちだった。リーグ優勝するチームには、例に漏れず、その成功の理由を物語るアイコニックな選手がいる。もしあなたがベストチームを選ぶのなら、そんな存在を仲間外れにするべきではない。

もちろん、2人の活躍をデータの面からも見ておこう。一つ興味深い分析を紹介しておきたい。今シーズンのチャンピオンシップのフルバックたちのパフォーマンスをあらゆるデータから分析したRam Srinivas氏、Matt Lawrence氏による記事だ。


非常に長い英語の記事だが、記事の肝となるデータはWyScoutによる図表で示されているので、論旨はとてもわかりやすい。ことルイスとアーロンズの2人に関しては、そのプレイがノリッジのビルドアッププレイに大きく関与しているということ、若いフルバックにありがちな「行ってこい」のスタイルではなく、守備面でもしっかりと貢献を果たしているということが伺える。

もちろん他にも、ここのデータを持ち出すまでもないが、リース・ジェイムズ(ウィガン)、エンダ・スティーヴンズ(シェフィールド・ユナイテッド)、ジェイダン・ボーグル(ダービー)といった選手たちをここで無視せざるを得ないのは心苦しい限りだ。またジェイ・ダシルヴァ(ブリストル・シティ)やルーク・エイリング(リーズ)など、そのけれんみのなさ故に過小評価されている選手たちに光を当てる場所も必要だろう。
しかしその役目は、今回は他の誰かにお願いすることにしよう。ここの両翼には、2人の黄色い彗星をセットで選ばざるを得なかった。


すぐに決まったフルバックに比べれば、センターバックの数多の候補者の中からたった2人を選ぶのは至難の業だ。ここでは先に、上で紹介したSrinivas氏、Lawrence氏によるセンターバック版の記事を載せておく。主題は“Ball-Playing Centre-backs”となっているが、守備面についてもしっかりと検討されている。


それぞれにそれぞれの長所があり、どの部分を重視するかは結局個人の好みに拠ってきてしまうのだが、私は最初にリアム・クーパー(リーズ)の名前を挙げたい。
何かと目立つポンタス・ヤンソン(リーズ)がパートナーとあって、必然的に「陰の実力者」となってしまっている選手だが、守備デュエル勝率40%超えという傑出した数字が今シーズンの彼の凄まじさを物語る。そしてなにより、その守備面でのクオリティを保ったままに、彼はマルセロ・ビエルサからの攻撃面での過剰な要求にも応えてみせた。あまりにスタッツに穴がなく、それでいて突出した部分(守備)もある。それだけのシーズンだったからこそ、プレイオフ準決勝での一件には目を瞑るのが人情というものだ。


クーパーの相方には、マイク・ファンデルホールン(スウォンジー)を選んだ。「本来チャンピオンシップでプレイするような選手ではない」と言われてしまえばそれまでだが、とにかく後ろからの組み立てという面で考えれば、リーグ内で彼の右に出る選手はいなかった。
グレアム・ポッターが志向するプレイスタイルにおいて、センターバックは最も重要な攻撃の起点となるポジションで、それにはパスの正確さだけではなく、広い視野、状況判断、創造性など、実に多くのことが求められる。あるいは期待以上の活躍でそれに応えてみせたファンデルホールンには、特殊なスタイルを持つチームにおける傑出度という意味で、最大級の評価を送りたい。


最後までファンデルホールンと迷ったのは、エイデン・フリント移籍の穴を十分すぎるほどに埋めたアダム・ウェブスター(ブリストル・シティ)だったが、ファンデルホールンに比べると少々トーマス・カラス(ブリストル・シティ)との合わせ技のような印象があったので、2人ともは選べない以上ファンデルホールンの方を取った。それでも攻守両面での活躍は圧巻の一言で、両者ともにここでのメンションに値するブリストルの2人だ。

他にも、シェフィールド・ユナイテッドのセンターバックたちを一人も選ばないのは本意ではないし、ダラー・レナハン(ブラックバーン)のように今シーズン急成長を遂げた選手もいた。また今シーズンのフィールドプレイヤーではリーグ唯一の全試合フルタイム出場、その上で6ゴール7アシストという成績をセンターバックながらにして残したジェイク・クーパー(ミルウォール)にも言及しておく必要があるだろう。


MF
センターMFの2人。ここは共に昇格を果たしたチームから、攻撃的な選手を選んだ。

まずは、当然ジャック・グリーリッシュ(アストンヴィラ)である。これはもはや説明不要だろう。冬場、彼の離脱中に調子を落としたヴィラに足りなかったものは、まさしく彼の力だった。キャプテンとして復帰し、その後チームをクラブ歴代記録の11連勝、プレイオフ経由での昇格に導いたというだけでも、十分な選出理由になる。


上で紹介したのは、今シーズンのグリーリッシュのパフォーマンスについて分析しているDaniel Lusted氏の記事だ。ここではパス、ドリブル、ランというグリーリッシュの3つの代表的な特徴について、定量的なデータを用いた記述がなされている。
一言で言えば、グリーリッシュの強みはその「局面を打破する」力。Lusted氏も書いているように、中盤の込み入った地帯でプレイすることを好む彼のプレイスタイルを考慮すれば、特にこのパスレートは異常とも言える数字である。

それに加えて、何にも増して今シーズン目立ったのは、これまで永遠の課題とされてきた内面の成長だった。移籍は既定路線と言われたところから迎えたシーズン、彼は決して集中力を途切れさせずに、最後までヴィラでのプレイに集中し続けた。そして310日、セント・アンドリュースで卑劣なアタックを受けたその時にグリーリッシュが取った冷静な対応は、彼が以前のような幼稚な面を捨て去り、成熟した一人のフットボーラーとなったことを雄弁に物語るものだった。


グリーリッシュの隣には、ようやく赤白のユニフォームを登場させることにしよう。オリー・ノーウッド(シェフィールド・ユナイテッド)だ。

センターバックまでもが果敢に攻め上がっていくシェフィールド・ユナイテッドのアプローチの肝は、実のところ彼らにパスを供給し、攻撃を形作る中盤の選手にある。だからまだ選手層が薄かった昨シーズン、ポール・クーツが離脱した冬場以降、チームが一気に失速したのは決して偶然ではない。

そこに連れてきたのがノーウッドほどの実力者だというのだから、クリス・ワイルダーは実に抜け目のない男である。少しタイプの違うジョン・フレックという別の中盤の軸がいたにしても、ノーウッドのような素晴らしいパサーがいなければ、間違いなく今シーズンのシェフィールドの昇格はなかっただろう。
スタッツを見ていくと、キーパスの数はグリーリッシュと並ぶリーグ3位タイの1試合平均2.3本。そしてロングパス数は1試合平均7.7本で、フィールドプレイヤーの中ではリーグ1位の数字となっており、ここにノーウッドがチーム内で果たした役割が集約されている。それに加えてブレントフォード戦で見せたような時折のスクリーマーがあるのだから、相手にしてみればぜひとも対峙することは避けたい選手の一人だ。




ノーウッドはこれで一昨年(ブライトン)、昨年(フルアム)、そして今シーズンと3シーズン連続でプレミアリーグ昇格を果たしたことになる。しかし来シーズンは、残念ながらどの昇格チームにも彼はいないように思われる。なぜならオリー・ノーウッド抜きのシェフィールド・ユナイテッドなど、現段階では考えられないからである。


右のアウトサイド。圧巻の22ゴールを記録したジャロッド・バワン(ハル)の存在は捨てがたいが、ここは心を鬼にしてパブロ・エルナンデス(リーズ)を置くことにした。そのプレイスタイル以外、「スペイン人」という言葉から連想される一切の文脈から切り離されて語られる寡黙な男は、その芝生の上での立ち振る舞いだけで、ファン、チームメイト、そしてあのマルセロ・ビエルサをも虜にしてみせた。


上で挙げたグリーリッシュ、ノーウッドらを差し置いて、1試合平均3本というキーパスの数はリーグ断トツの1位。今シーズンは4人しかいなかった10ゴール10アシスト以上の「10-10」クラブのうちの一人(12ゴール12アシスト)でもあり、90分あたりのxAの数値(0.27)もリーグトップだった。そして、ここが重要な部分だが、この圧倒的なスタッツを叩き出したのにもかかわらず、彼は年間最優秀選手候補どころか、EFL選出の年間最優秀チームにも選ばれなかったのだ。

メスト・エジルやフアン・ロマン・リケルメを思い出してみるといい。こういったタイプの古典的な10番の選手は、その優雅なプレイスタイル故に、往々にして「サボっている」、「やる気がない」という評価をよくされてしまう。今年で33歳になるパブロにしても、毎試合彼に魅了されているリーズのサポーターを別にすれば、どこか「お高くとまった選手」という見られ方をされがちだ。

確かに彼は多くを語らない。派手なドリブルで相手を抜き去ることもしない。その背中で語り、寸分の狂いもないキックでチャンスを演出し、静かに喜ぶ。そろそろ我々は、彼からの自己発信に頼らずとも、パブロ・エルナンデスの偉大さに気付くべきだ。
ビエルサに「私をより優れた監督にしてくれる選手」とまで言わしめる選手が世界に何人いるだろうか。ファンが「勝ってくれ」と心から叫んだその1秒後に、決勝点を決められる選手が他にいるだろうか。不遇な彼に、この極東の地から、ささやかながらこの右サイドのポジションをプレゼントしよう。




xAトップのパブロが右サイドなら、その逆には実際のアシストキングを置こうではないか。左のアウトサイドには「グリフィン・パークのメッシ」、サイード・ベンラーマ(ブレントフォード)を選んだ。

ベンラーマも4人いる「10-10」クラブのうちの一人(10ゴール14アシスト)。怪我がちだったせいで先発出場はわずか29試合(途中出場9試合)だったことを考えれば、この数字は立派という他にない。パワー、素早さ、技術、そして派手さと全てを兼ね備えたウインガーで、この選手を昨年の夏にたったの200万ポンドで取ってきたブレントフォードのリクルートメントには、改めて脱帽である。


この他にも、もう一人の「チャンピオンシップのメッシ」であるエミ・ブエンディア(ノリッジ)や、こちらも「10-10」を達成したジョー・ローリー(ノッティンガム・フォレスト)、ハリー・ウィルソン(ダービー)にカミル・グロシツキ(ハル)など、それぞれに印象的な活躍を見せた選手たちがいたアウトサイドのポジション。しかし1年目これだけのインパクトを残したという点で、ベンラーマを上位に取った。




FW
本来であれば、2トップの片方は異論の余地なくリーグ得点王のテーム・プッキ(ノリッジ)ということになるのだろうが、ノリッジからは既に2人選んでいるので、別の選手を選ばざるを得ない。もちろん29ゴール9アシストという数字、そしてこれをフリーで取ったというノリッジの成功を象徴するような選手であることは、先んじて述べておこう。

ストライカーの一人目は、プッキに次ぐ得点ランク2位タイとなったニール・マペイ(ブレントフォード)だ。25ゴール8アシスト、これだってプッキに負けるとも劣らない立派な数字である。特に彼の場合、秋口に一度不運な試合中の衝突で脳震盪を起こしながらの数字であったことも、ここでは追記しておく。

先ほどのベンラーマもそうだが、このマペイも2年前の夏にサンテティエンヌから160万ポンドという廉価でやってきた選手である。「ベンラーマ→マペイ」というラインでは、特定の選手間の数字ではリーグトップとなる6ゴールを記録しており、この両者を残すことができるかがこの夏のブレントフォードの大きなカギとなってくるのは間違いない。


いよいよ最後の一人。おそらくここまで読んでくださっている皆さんの予想を大きく裏切ることになるが、私が選んだのはルーカス・ジューコヴィッチ(バーミンガム)だ。
なぜビリー・シャープ(シェフィールド・ユナイテッド)ではないのか。なぜタミー・アブラハム(アストンヴィラ)でもないのか。なぜシェイ・アダムズ(バーミンガム)ですらないのか。

ジューコヴィッチは、チャンピオンシップで最も過小評価されている選手の一人であるように思う。これまではスーパーサブ的な扱いが続き、あと一歩というところで怪我や不調に泣かされレギュラー奪取に至らなかった彼だが、そのポテンシャルの高さは誰もが認めるところだった。

バーミンガムが補強禁止処分を受け非常にタイトなメンバー構成で臨むことになった今シーズン、実質ストライカーがジューコヴィッチとアダムズの2人だけという状況の中で、ジューコヴィッチは遂に覚醒の時を迎えた。空中戦勝利数は2位のジョシュ・マッギニス(ボルトン)の1試合平均8.7回を大幅に上回るリーグトップの1試合平均12.4回で、「10-10」クラブにも名を連ねる(14ゴール10アシスト)。

また特定選手間で記録したゴール数では、先に述べた通り「ベンラーマ→マペイ」の6ゴールがリーグトップだったが、これに次ぐ5ゴールを記録した組み合わせが2コンビあった。それが「ホタ→ジューコヴィッチ」、「ジューコヴィッチ→アダムズ」と、ゴールアシストの両方でともにジューコヴィッチが絡んでおり、彼の存在がバーミンガムの中でいかに大きなものであるかがわかる。

そういったスタッツもあり、“WhoScored”が選ぶ平均評価点による年間最優秀選手賞では、2位のグリーリッシュに大差をつけ1位に選ばれた。
いつでもひたむきで、決して技術に優れているとは言い難いものの、その気持ちが前面に出たプレイぶりでファンの心を掴んできたビッグマン。その活躍の割にこれほど背番号10が似合わない選手もそうはいないが、今やそれさえも彼の唯一無二の個性となって、チャンピオンシップ随一のストライカーとしての第一歩を踏み出した。私情を挟むことをどうか許していただきたい。そんな「ジューク」のことを、私は愛さずにはいられない。






7000文字以上を費やし、私の18/19シーズン、年間最優秀チームができあがった。


もし監督を選ぶとすれば、ここではクリス・ワイルダーを選ばざるを得ない。改めて説明するまでもないが、どん底の状況にあったシェフィールド・ユナイテッドをわずか3シーズンでプレミアリーグの舞台にまで導いたその業績は、真に驚くべきものである。

ただ、選手の方でリーズの人間を既に2人選んでいなければ、私は間違いなくここにマルセロ・ビエルサの名前を書いたことだろう。
彼は昇格に失敗した監督だ。スパイゲートという大事件も起こした。しかし今シーズン、リーズの街に彼がもたらした眩いばかりの希望の光は、そんなことで色あせるようなものではない。優れたフットボールを通じて、彼は偉大なファンと偉大なクラブとの間の関係をも再構築し、リーズ・ユナイテッドという存在を再び尊いものにした。それだけで彼は、最も重要な存在なのだ。



19/20シーズンに向けて】
最後に、来る19/20シーズンを迎える前に、一筆加えておきたい。

18/19シーズンを多少なりともご覧になった皆さんは、それぞれにどのような感想をお持ちになっただろうか。私の感想は、一言で言い表すならば、「先鋭化」だった。

ノリッジ、シェフィールド・ユナイテッド、アストンヴィラ。今シーズンの昇格3チームの顔ぶれを見る限り、プレミアリーグという大目標を目指す上では、資金力はもはや絶対条件ではなくなったと見ていいだろう。代わりに一貫したクラブとしての哲学、そして攻撃的にリスクを取る姿勢がなければ、例えば今シーズンのミドルズブラのような形で、最後には力尽きてしまう。
小手先の辻褄を合わせただけでは、最後に成功を掴むことはできない。それは確かにリーグとしてはあるべき姿であり、見る側にとっても非常に魅力的な戦いの舞台となる。

ただそれは、物事の一面でしかない。上位を巡る争いが先鋭化していく一方で、間違いなくその逆側では、その割を食うクラブが出てきている。

今シーズン、ボルトンの選手、スタッフ、そしてなによりサポーターたちが置かれた状況は、心からの同情を禁じ得ない悲惨なものだった。この夏の移籍市場でもSoft embargoの真っ只中にいるクラブが複数あり、また下部に目を移せば、ベリー、マクルスフィールド、モアカムなど、深刻な状況に陥ったクラブがいくつもあった。

資金難にしろ、オーナーシップの問題にしろ、もはや今の時代にあって、それぞれのクラブに自浄作用を求めるのは酷な状況になった。上でリスクを取ることが成功への必要条件だと述べたが、それは「ピッチの中で」という但し書きが付けられるべき要素であって、それ以外の部分でもリスクを取らなければならないのだとすれば、まったくもって不健全なリーグだと言わざるを得ない。

3月、1-1で引き分けたディープデイルでの試合後、アレックス・ニールリー・ジョンソンは互いへの称賛を口にした。その両者を評する言葉には、「若手を積極的に起用」し、「少ない予算でやり繰り」し、「エリートクラブに立ち向かうアンダードッグ」という共通項が見出された。
しかし同じ週に発表された17/18シーズンの収益では、プレストンは700万ポンド、ブリストル・シティ(11月に公表済み)は2350万ポンドの損失を1年間で出していたことがわかった。一方、収入は(特にプレストンの場合)大部分が選手の売却とオーナーからの補填によるもので、プレストンは収入を1ポンドだとした場合、選手の週給には1.13ポンドを支払っていることになる。事実として、このような状況のクラブでさえ、チャンピオンシップでは「比較的」健全なのである。


膨張を続けるイングランドフットボール界の財政の風船が、そろそろ限界に近付いていると危惧するのは、私の思い過ごしだろうか。各クラブの成長度合いとリーグ全体での金銭の総和との成長が同時進行しているとは明らかに思えず、このままでは競争力が落ち、毎回決まったチームが昇格していくだけの「強者のためのリーグ」ができあがってしまう。

この状況にメスを入れるのは誰か。それはもちろん、EFLしかいないのである。今のこの危機的な状況は、EFLの楽観的な消極介入の姿勢が招いたものだと言っても過言ではない。
League Oneでベリーの開幕戦延期という事態まで起きてしまった今、ショーン・ハーヴィーの退任発表後4ヶ月が経ちながらも依然新しいCEOが決まっていないという状況ではあるが、まだ見ぬ新CEOには積極的な動きを期待したい。さもなければ、今のEFL全体に漂う不穏な雰囲気は、より一層不快さを増していく一方であるように思える。



本命不在の19/20シーズンの展望も少しだけしておこう。

結論から言うと、私はストークを昇格候補筆頭に考えている。「6ヶ月のプレシーズン」を与えられたネイサン・ジョーンズは、まず守備の再構築を徹底し、昨シーズンの後半はロースコアゲームを繰り返した。もちろん本番はここからで、ルートン時代に似たダイヤモンド型のフォーメーションを採用して臨む今シーズン、スタープレイヤーたちの扱いにさえ気を付ければ上位進出はまず間違いないはずだ。

例年のことながら、降格組は評価が難しい。あのウォルヴズに迫った17/18シーズンからほぼメンバーが変わっていないカーディフは当然昇格候補だが、核となるストライカーの不在が大きな懸念材料ではあり、動き回るボビー・リードの前でどっしりと構える大柄な選手が欲しい。

フルアムは前線の破壊力だけなら間違いなくリーグNo.1だが、スコット・パーカーの監督としての技量が完全に未知数である。積み上げたものをぶっ壊した昨シーズンの後とあって、選手の自信にも不安が残る中で、ここは監督次第だとしか現時点では言えない。

ハダースフィールドもあれだけの惨たらしいシーズンを過ごした後とあって、上位争いに絡むのは容易ではないかもしれない。ただ一つポジティヴな材料は、ドルトムントⅡからイングランドにやってきたワグナー、ファルケといった監督たちは、いずれも2年目に結果を残したということだ。ヤン・シーヴェルトにとっても、今年は本領発揮のシーズンとなるのだろうか。

心配なのがダービーだ。誰がどう見ても、昨シーズンの原動力は若きローンレンジャーたちだった。その全員がペアレントクラブに戻り、FFP絡みで補強も満足にできず、ウィルソン、マウントらの穴を埋めるのはキーラン・ダウエルのみ。彼は才能は確かな選手だが、これまでチャンピオンシップでも十分なインパクトを残してきたとは言い難い。もう一人の獲得選手、グレアム・シニーにしても良い選手であることには間違いないが、果たしてダービーの弱点を補強できるような選手かと言われれば微妙だ。

それに加えて、フィカヨ・トモリの抜けた守備陣である。復活を果たしたリチャード・キーオはまだしも、傷だらけのベテラン、カーティス・デイヴィスを現状センターバックのファーストチョイスとして数えなければならない状況には、新監督のフィリップ・コクーも頭を抱えているはずだ。もしあと1週間のうちに大がかりな補強がなければ、残留争いさえも見えてくるようなメンバー構成だろう。



とはいえ、今はまだ何もかもが始まる前。19/20シーズンもこの最上級のエンターテインメントに身を委ね、奥深いイングリッシュフットボールの世界を存分に楽しむことにしよう。



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